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小説 ただひと EP30 レクイエム

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP30 レクイエム  

 

 

ヘリオス達はアイネ村の人々を救出し、治癒させた後全員を村まで送り届けた。村の人々は恐怖を感じているようで、ヘリオス達に村に残って守ってほしいと懇願した。だが、特殊任務を帯びた彼らはそこにとどまるわけにもいかず、アウダスがディートリヒに宛てて護衛のため一帯に兵士を送るよう要請することになった。

そしてもう一つの問題は、研究施設に閉じ込められていたアンフェルの人々だった。彼らはどうやってエリスに連れてこられたのか分からないが、皆見知らぬ土地に突然連れてこられて恐怖を感じているのがよく分かった。彼らをそのままにする訳にもいかないので、一旦学都ステラで保護してもらうことになった。ステラなら、彼らの体質や特殊な事情に理解を示してくれる人も多い。セレーネは怯える彼らを説得し、一路ステラまで引き返した。

ステラの学者達は、アンフェルの人々を歓迎して無事元の世界に戻れるようになるまで保護すると約束してくれた。文献上でしか知らなかったもう一つの世界の住人に、学者達は色めきたった。

 

ヘリオスはアンフェルの人々と別れた後、故郷に帰りたがる彼らの顔を思い出した。

「彼らをどうすればアンフェルに送り届けられるんだろう。セレーネはどうやってきたんだい?」

「私は、最初会ったあの森の奥の光の柱からここに来たの。あそこまで行けばみんな元の世界に戻れると思うけど、でも道中危険が多すぎるわ。普通のアンフェルの人だと死んでしまうかもしれない」

「え?そんな場所があるのかい?」

それを聞いたイーサンが驚いて首を突っ込んだ。

「じゃあアイオーンに乗せて彼らをそこまで連れて行けば良いんだよね!そんな場所があるなんて知らなかったなあ!」

ルミエールも手を叩いて喜んだ。

「そうか!そういう手があるのか!じゃあみんな国に帰れるな!」

「うん。でも今は体を一度分解されかけた後だから、しばらくは体力を取り戻すためにも安静にした方がいいと思うの。あの光の柱からアンフェルに行くまでにもかなり体力を削るから」

それに皆頷いた。治療を施したとはいえ、彼らは心身ともに不安定な状態になっている。それがしっかりと元に戻るまでしばらくは様子を見て無理は避けた方がよかった。

「ならどちらにしてもしばらくはここステラで彼らを保護してもらう形になるな。突然の話で迷惑をかけるが…」

アウダスの言葉にイーサンは首を振った。

「いや、全然!たぶんみんな喜んでると思うよ。だってアンフェルの人達と交流できるなんてそうそう無いしね。ずっとこっちに居てくれても良いくらいだよ。僕らも彼らの体に負担がかからないよう色々勉強しながらお世話したいし、それで彼らが少しでも回復して元気になってくれたら良いなと思うよ」

「やはりステラに頼んで良かった。よろしく頼む」

「良いんだよ!困ったときはお互い様。エリスもアンフェルもお互い様ってね」

「あの…」

セレーネが声をかけた。

「みんなに話があるの。どこか誰もいない部屋で話したいんだけど」

「え?いいよ。空いている研究室があるからそこに行こう」

イーサンは車椅子を操縦し、皆を案内した。

空いている研究室に皆が入ると、セレーネは近くに誰もいない事を確認してから扉を閉めた。そして深刻な顔で始めた。

「エリスの人とアンフェルの人が集められていたのは、きっと対消滅を起こすためだと思うの」

対消滅って、あの?」

一同が驚愕の表情を浮かべた。

「ええ、対消滅を起こし、黒奇石でそのエネルギーを世界に拡散させ、二つの世界のバランスをとる。あの装置はそのためだと思うわ。だから、分解、増幅、拡散の装置がひとつながりになっていた」

「なんてことだ…!」

誰しもがその事態の深刻さに表情を変えた。

「あのもやは急いでいるようだったわ。確かにアンフェルは崩壊しかけているし、エリスにもその影響が出ている。気になるのはソロンさんがあのもやと対話し全ての事情を知っていたことなの」

「だがソロンは俺達と共闘し、人々を助けたじゃないか」

アウダスはソロンをかばった。

「ええ、でもそれは対消滅により世界の均衡を取り戻せると知っていてのこと。しかも彼はこれほど多くの犠牲を必要としなくてもいいと言っていたわ。彼がどんな方法で問題を解決しようとしているか知らないけれど、ソロンさんはあのもやと同じことを考えていると思うの」

「数が少なくても、同じように対消滅を起こすってことか」

ルミエールが彼女の言葉から推測した。

「ええ。彼は私の事も私の使命の事も知っていた。なのに私にセルギオスの秘儀を使わせたくなさそうだった。彼が今まで行ってきたすべての事はここに帰結すると思うの。彼は何らかの方法でエリスとアンフェルの均衡を取り戻そうとしている」

「それって良い事なの?」

マナが尋ねた。セレーネはそれに複雑な表情を浮かべた。

「均衡を取り戻すことそれ自体は世界にとって良い事よ。でもエリスの人がそれを起こす場合はあの通り、誰かを犠牲にすることになるわ」

「止めないと!それでセレーネなら他の解決方法を知ってるんだろ。ほら、聖者のなんとかって」

セレーネはヘリオスの言葉を補った。

「聖者セルギオスの秘儀ルミナ。これを使えるのはアンフェルの選ばれた者だけ。これを使えばあんな惨い事をしなくても良くなるわ」

「しかしソロンは何故それでもそれ以外の方法で解決しようとしているんだ」

アウダスが尋ねた。

「分からないわ。分からないけど、止めないといけない。たとえ数が少なくてもエリスとアンフェルの人が犠牲になるかもしれない。世界のためにそんな犠牲は必要ないわ」

「うん。そうだね!次はどこに現れるんだろう。アウダス、地図ある?」

エリヤはアウダスに地図を出すようせがんだ。彼は地図を出したものの、予測はできないようだった。

「今ステラの学者達やディートリヒにも頼んでソロンの情報を共有するようにしている。何か異変があれば俺達にすぐ情報が入るはずだ」

「その時はすぐに捕まえに行こう」

ヘリオスの言葉に一同声をあげた。けれどイーサンだけが黙ったまま、車椅子を押して彼らの前に出た。

「今はアンフェルの人たちを守らないといけないから、僕は参加できないと思うけど、もし何か情報が入ったらすぐに知らせるね」

セレーネはそれに頷いた。

「えぇ、お願いイーサン。彼らは今傷ついてるし、もしかしたらまた狙われるかもしれない。彼らをアンフェルに帰すまで守ってあげて」

「任せて!」

イーサンは胸を張って言った。

 

 

 

つづく

ただひとEP30(2)

 

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