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小説 ただひと  EP28 共闘(4)

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

 EP28 共闘(4)

 

攻撃してくる機械を退け続け、ようやくある部屋の前にたどり着いた。ソロンはピタと止まると振り返ってアウダスを見た。

「アウダス、おそらくここだ。今まで散々迷惑をかけてきたのに今になって勝手かもしれないが、助けてほしい。私一人ではきっとあの人を止められない」

アウダスはソロンが何にそんなに怯えているのか分からなかった。

「分かった。一緒に村の人を助けよう」

ソロンは礼を言うように静かに頷くと扉を開けた。中は広い実験室のようで、五、六メートル四方のガラスの箱の中に人がぎゅうぎゅうに押し込められていた。ガラスの箱には様々なケーブルが繋がれていて、中央の光る筒状の装置に繋がっている。そこには黒奇石が置かれていて、煙突のように天井までのびている。中に入っている人々はヘリオス達に気付いてだしてくれとガラスを叩いて叫んでいた。

「なにこれ…!」

セレーネはその有様に絶句した。他の者達も同様だった。箱は二つあり、もう一つにはセレーネのような外見の人々が入っていた。アンフェルとエリス双方の人たちがガラスの装置の内側から叫んでいた。

ソロンは装置にかけよると「すぐに、すぐに外に出して差し上げます」と言って、近くのパネル型の機械を触りはじめた。

その時、空間が歪んで黒い電気を帯びたもやが現れた。

『貴様、遅いではないか』

ソロンはもやを睨みつけた。

「これはどういうことですか!村の人を出して下さい」

『笑止。貴様がいつまで経っても仕事をせぬから、私が直にそれをやっているのだぞ』

「もう少し待って下さい!まもなく私の研究も完成します!そうすれば、これほど多くの犠牲を必要とせずとも良くなります」

『どうして貴様のグズに私が付き合わねばならんのだ。私が欲しいのは成果だ!既に用意はできている。何をためらう』

「なんだ?誰と話しているんだ?」

ヘリオス達はソロンのやりとりを聞きながら見えない敵を探した。

「聞き入れていただけないのなら…」

ソロンは杖を振り上げ次元の扉を開いた。中からロストが現れる。

「ロスト、装置を破壊し人々を外に避難させるんだ」

「あいわかった」

『歯向かうのか!』

突然装置に電源が入り、人々が苦しそうに悲鳴を上げ始めた。ロストは大きな手で装置につながれたケーブルを引きちぎり人々の入った装置ごと床から剥がすと、一人残らず抱えて次元のハザマに退避した。ソロンはそれを見届けてもう一度杖を振りあげる。次元の扉はピタリと閉じてロストも人々も綺麗に消えてしまった。

『私に楯突くのか貴様。許さんぞ』

もやは怒りに声を震わせ、周囲を漂う電気を圧縮させ光る剣を四本生み出した。剣はまるで意思を持っているかのようにそれぞれ身近にいる敵に襲いかかった。アウダスやヘリオス、ルミエールは自らの剣でそれを止め応戦する。しかしエリヤに向かっていった剣は防ぐことができない。まるで矢のような勢いで彼女の胸めがけて飛んできた剣を危ういところで避けたエリヤは、すぐさま矢をつがえて剣を狙う。的が小さく素早いので彼女は目を細めて狙いを定めた。

「神弓ツキヨミ、お願い!」

彼女の矢は間違いなく剣に向かっていったが、剣は避けるように突然軌道をずらした。彼女が悔しがる暇も与えず、剣はエリヤめがけて飛んでくる。再び避けようと彼女が身をかがめた時、目の前で金属同士がぶつかるような音がした。ソロンのバリアが彼女を守ったのだ。

「剣の使えない者は皆この中に入るんだ!」

ソロンはマナやセレーネに向かって叫んだ。ソロンは杖を頭上高く掲げ、呪文を唱え始めた。すると光る剣は震え始め、溶けるように目の前から消え失せた。

『小癪な』

もやは再び電気を発生させ始めたので、ソロンは掲げていた杖を下ろし、次の詠唱に入った。

「アウダス、今から術でもやを実体化する。その時に攻撃しろ」

「わかった!」

ソロンが詠唱を始め、次第に彼の周りに赤黒い糸のような禍々しい光が生まれ始めた。そして最期の言葉を言い終えた瞬間赤い光がもやめがけて飛んでいき巻きついて動きを封じた。

「今だ!」

それを合図にアウダスは剣でもやを攻撃した。何か硬いものに当たったかのような衝撃が剣に伝わる。そこにルミエールとヘリオスも加勢する。一斉にもやを攻撃し、激しい音が響く。

『なんだこのただひと共は。目障りだ』

もやが一瞬光ったかと思うと同時に上から岩で押さえつけられるような強い圧力が三人を襲った。三人は地面に叩きつけられ今にも押しつぶされそうになって耐えている。

「アウダス!」

ソロンは兄弟が悲鳴をあげることもできずに地面にへばりついている姿を見て青ざめた。強い重力が今にも彼らを押しつぶさんとしていた。ソロンはすぐさま術を切り替え杖を振り、何かの呪文を唱えた。衝撃波がもやを攻撃する。その瞬間まるで注意がそれたかのように彼らにかかる重力がなくなりアウダス達はようやく息を吹き返して起き上がった。

「みんな頑張って!」

マナが全員をすぐさま回復させる。セレーネも黒いもやめがけて魔法を放った。光る球体がいくつももやを直撃する。その度にもやは蒸気のような光を発生させて動きを鈍らせた。最後の光球が直撃すると、もやは実態をとどめることも難しくなったのか拡散しそうになっていた。

『そこのただひとはエリスの者ではないな。この魔力、お前はセルクト・ルミナリエによって選ばれここに来たのか?そうだろう』

「え?どうしてそんな事を知っているの?」

セレーネは突然のもやの言葉に動揺した。

『ここに来たのなら、やるべき事はただ一つ、ルミナを使え。そうして世界のバランスをその身によって取り戻せ』

「あなたは一体…」

もやの言葉でセレーネは動揺しているようだった。だがそこにソロンが割って入った。

「違う!彼女はエリスの人間です。私と同じような。だからセルギオスの秘技は使えません。彼女も普通のただひとです」

『くくく。どちらでも良いが、お前は嘘が下手だな』

もやがゆらゆらとセレーネに向かっていこうとしたので、ソロンはすぐさま彼女の周りにバリアを作って中に封じ、もやに対し先程の硬化の魔法を使った。赤黒い光が何重にももやに巻きつき拘束する。

「今だ!アウダス!攻撃しろ」

「わかった!」

アウダス達は一斉にもやを攻撃した。ソロンの雷の魔法も直撃し、エリヤの矢が何本も刺さる。ざんざんに攻撃されたもやはついに実態を保てなくなり薄れていった。

『もうエネルギーが尽きてきた。仮の体では限界があるようだ。ソロン、私に楯突いた罪、これからつぐなわせてやる』

もやは消え入りそうになりながら最後に恨み節を吐いて消滅した。

ソロンは杖を下ろし、もやのいた辺りに近寄った。もう現れないか確認しているようだった。

セレーネは不審げにソロンを見ていた。彼女の使命と秘密をことごとく彼とあのもやが知っているようで不気味だったからだ。だが、その視線に彼が答える事はなかった。

「外に村の人達がいるはずだ!戻ろう」

ソロンは来た時と同じように急いで部屋を出た。そして中を移動する途中、建物が軋みをあげて崩れ始めた。そしてどんどん光となって消滅していく。

「術者が居なくなったせいで建物が消え始めている。早く出るんだ」

ソロンの言葉でヘリオス達は急いで外を目指した。

建物の外に出るとすぐに建物は消滅した。外には傷ついて弱った人々が座りこんでいた。ロストは身をかがめて一人一人治療をしているようだったが、傷が深く、また手が回らないせいか多くの人が地面に横たわったままだった。うめき声があちらこちらから聞こえてくる。ロストはソロンに気づくと声をかけた。

「おお、ソロン。この通りだ。命に関わるような傷は皆癒したが、わしの力だけでは全員を完治させることはできない。もうわしのエネルギーが限界なんだ」

「そうか。無理をさせてすまないロスト。あとはあのクラウスの子供とアンフェルの少女に任せよう」

ソロンはマナ達をを見て「あとは頼む」と言った。そして横たわる人々を見て悔しそうに「本当に…すまない…」とつぶやくとロストの手に乗り肩まで上げてもらうとその場を去ろうとした。

「ソロン…!」

アウダスが叫び、彼も振り向いた。

「やっぱりお前は何も変わっていなかった。何か訳があるんだろ?俺が力になる。だから…」

アウダスは兄弟に向かって手を差し伸べた。だがソロンは悲しそうに首を振って、再び次元の扉を開くとロストと共に消えていった。

 

 

つづく

ただひとEP29

 

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