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小説 ただひと  EP26 天空要塞(3)

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

 EP26 天空要塞(3)

 

 六箇所目のポイントは天空要塞の方が早くたどりついていた。要塞は緑色の光を地上に向けて照射している最中だった。遠くからでもはっきりとわかる鮮明な緑色の光が真っ直ぐに地上に向けて伸びて行く。そしてその光が細くなり、途絶えると、要塞は役目を終えてその場を去っていった。アイオーンで後からその場所にいくと、確かに魔法陣があり星のように輝いていた。

「一足遅かったか」

アウダスが悔しそうにつぶやいた。

「大丈夫、天空要塞はもうすぐだから、アイオーンを飛ばせばすぐだよ!」

イーサンは明るく言った。

 セレーネは窓から不思議そうにその光る魔方陣を見ていた。いくつもの魔法陣を作り、それが稼働するように特殊な光を浴びせている。まるでこの地上全体で特殊な魔術を行おうとしているようだった。

「セレーネどうしたの?」

エリヤが話しかけた。

「うん、いくつもの魔法陣を作ってソロンさんは何をしようとしているんだろうって思って」

「ソロンはディオンと一緒になって何か悪いことを考えているんだよ!でないとあんなひどい事しない。セレーネ、二人を止めよう。私はあなたを全力で守るから」

エリヤはつい熱くなって彼女の手に触れようとしたが慌てて後ろにひっこめた。

「そうね。森の民の黒奇石も取り戻さないと。私の使命も果たせなくなる…」

セレーネが俯きがちにそうつぶやいたのでエリヤは彼女を安心させようとした。

「大丈夫!私が森の民の誇りにかけて絶対に取り返すから!救世主様は心配しないで」

「ありがとうエリヤ」

セレーネは彼女を心配させないよう明るく言うと窓から離れた。

 

 アイオーンが飛び続けて二時間が経った頃、ようやく海上で天空要塞が見え始めた。

イーサンは直径二キロと言っていたが、それ以上あるのではないかというくらい大きかった。形としては菱形に近く、表面は黒くゴツゴツとしていて、最下部にある地上へ向けて伸びる一本の槍のようなものの先端が緑色に光っていた。この要塞に比べると、アイオーンは虫のように小さかった。イーサンは乗り移るためにも飛空艇を寄せ始めた。すると、敵の匂いを嗅ぎつけたのか空飛ぶ魔物が3匹要塞から出てきた。翼竜のようなそれは飛来すると飛空挺を攻撃し始めた。

「大変だ。あの魔物をなんとかしないと!」

ヘリオスは窓の向こうに見える敵を見た。鋭い鉤爪でアイオーンの表面を引っ掻いたり叩いたりしている。

「イーサン、アイオーンには足場になるような場所はないのか」

「それなら甲板がある。階段を一番上まであがればそこだよ」

「よし、あの魔物を退治しよう」

ヘリオス達は武器を手に階段を駆け上がった。

 甲板へとつながる扉を開けた瞬間、突風が彼らの顔を叩きつけた。飛ばされないよう用心して出ると、すぐに1匹の魔物が彼らを見つけ、仲間を呼ぶように甲高い声をあげた。

 翼を広げると4メートルはありそうだった。魔物達はヘリオス達に向かって攻撃を仕掛けてくる。それを剣を振り回して迎撃するという格好で、非常に分が悪かった。以前もこんなことがあって、その時はディオンが居て助けられたな、とヘリオスは剣を振り回しながらそんなことを思い出していた。

「みんな、伏せて!魔法で焼き払うわ!」

セレーネが叫び、ヘリオス達が伏せると真上を熱風が通り過ぎていった。そして炎の渦が3匹を襲い、甲板の上に落ちてきた。

「よし、今だ!」

アウダスが叫ぶと同時に斬りかかった。ルミエールとヘリオスも各自一体ずつ撃破していった。翼竜によく似た魔物達はよろよろと攻撃から逃れるようにアイオーンを離れていった。

 その時天空要塞は奇妙な音を発し始めた。まるで何かが低く振動するようなぶーんという音だった。見ると最下部の緑の槍の部分から薄いベールが要塞全体を包みこむようにのびてくる。

「何だあれは」

アウダスがそれを指して言った時、アイオーンの動きが急速になった。そして見る間に要塞に近づいていく。

「みんな、危ない。早く中へ!」

マナが戸口で叫び、全員が中へ入ると扉を閉めた。その瞬間、大きな振動が艦全体を揺さぶった。扉を開けると、アイオーンが要塞のヘリに突っ込んでいた。

「イーサン、何無茶やってるんだ」

ルミエールが呆れたように言った。すぐさまイーサンも甲板までやってきた。

「ちょっと手荒なことになってしまったけど、仕方ないよね。要塞がバリアを張ろうとしてたんだ。完全にバリアが張られる前に滑り込めて良かったよ。さ、みんな。これからが本番だ。外部から観察した限りだと、動力部は下部にある。動力源はこのアイオーンと同じ黒奇石の可能性が高い。そして上部に窓のようなものがたくさんあるから、操縦席はおそらくこの要塞の上の方にある」

「なるほど、では隊を二つに分けた方がいいな」

アウダスが言った。まっさきにエリヤが手を挙げる。

「私が下部に行く。御石を取り戻すのは巫女の役目よ!」

イーサンはそれを聞いてやっぱりという風に頷いた。

「そう言うと思ってたよ。でもひとつお願いがある。黒奇石を回収するときは必ず全体の九割までにしてくれ。でないと、動力源を失って要塞もろとも真っ逆さまに墜落してしまうから。そうなるとみんな脱出できない。一割あれば少しの間は持ちこたえられるはずだ。その間にも要塞は傾き高度を落とし続ける。落ちてしまう前にみんなここまで戻ってきてほしい。僕はここでみんなを待ってるよ」

アウダスは全員を見た。

「隊を分けるが、エリヤ一人では危ない。マナ、ルミエール。一緒に行ってくれるか?」

アウダスが尋ね、ルミエールは胸を叩いて応じた。

「任せてくれ。俺がちゃんとボディーガードの役目を果たしておくから」

ヘリオスとセレーネは俺と一緒に上層部へ向かう。ソロンが居るかもしれない。頼んだぞ」

「はい!」

ヘリオスとセレーネは力強くうなずいた。

中は沢山の通路が入り組んでいて迷路のようだった。アウダスの班とエリヤ達の班はそれぞれの方向を目指して進んでいった。中は作業員らしき魔物だらけで、彼らに気づかれないよう慎重に進まねばならなかった。そしてアウダス達は魔物の進んだ方へとついていき、何層も経てようやく最上階へとたどり着いた。

 

 

つづく

ただひとEP26(4)

 

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