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小説 ただひと EP26 天空要塞

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP26 天空要塞

 

ヘリオス達はディートリヒの予測をもとに、しばらくは学都に滞在し、彼の出現を待っていた。セレーネはソロンの研究の解読に努め、イーサンは飛空挺アイオーンの改良に精を出していた。マナは多くの学者達から珍しがられて引っ張りだこだったし、エリヤは救世主を守ると言って修行に余念がなかった。アウダスはエリヤの相手をする以外は、混乱した気持ちを整理させようと一人でいる事が多くなった。ルミエールとヘリオスは手持ち無沙汰で、いつもぼんやりしているか研究施設をぶらぶらしていた。

 

研究施設の中庭でヘリオスは一人ぼんやりとしていた。研究の産物なのか、見たこともない植物が栽培されてそれが青々と茂っている。その合間を人工の小川が流れ、静けさの中に水音を響かせている。

彼は中庭の真ん中に座って色々な事を思い出していた。村を出てからこれまでの間、様々な事が目まぐるしく起こった。セレーネに出会い、村を出て国軍に入りアウダスのもとで国につかえるようになった。知の達人ソロンを見つけ、その目的も分からないままに戦うことになった。でも逃げられてしまい、王都に向かう途中マナと出会い、仲間になった。王都では兵士としての任務についていたのに、ルミエールに会って国のやり方に疑問を感じるようになり、アウダスと袂を分かち戦いもしたが、人々の自由を求める戦いに彼も理解を示してくれて最後には再び手を取り合う事になった。そしてその後も兵役について知の達人ソロンを追っていたのに、途中でディオンの裏切りが発覚してしまった。子供の頃からの親友だったのに、彼の心の変化に気づく事ができなかった自分がヘリオスには悔しかった。そしてエリヤやイーサンにも出会い、今度は知の達人が抱えていた真実を突

き止めようという所まで来ている。全てが目まぐるしく、またあまりに重かった。ディオンは激流のような運命に自分はただ翻弄されているだけのような気がしていた。

その時、ドアが開閉する音がして誰かが中庭へ入ってきた。振り向くと、ルミエールだった。

「よお、お互い暇だな」

彼は片手を上げて挨拶をすると、彼の隣に座った。

「ここはいいな。静かで」

「あぁ、こういう水の音がする場所にいるとなんだか故郷を思い出すんだ。目を閉じると、今でもドートニク村の事を思い出す」

ヘリオスはそう言うと黙った。

「俺はアリシアの入れてくれた一杯のお茶を思い出す。こう言う静かなところに行くと、アリシアが水筒を出してお茶を注いでくれたんだ。そしてちょっとの間だけ、色んなことを忘れて景色を眺めようって。懐かしいな」

彼は冗談めかして言った。アリシアは先の王都での戦いで命を落としていた。ヘリオスはなんと言えばいいのかわからず言葉に困った。

「ルミエール…」

「なんだよ。気にするなって。アリシアは誇り高く散ったんだ。俺も彼女の事を誇りに思っている。それよりも俺はアウダスやお前の方が心配だけどな」

アウダスは今日も一人で何か考え事をしていた。

「ソロンもディオンも今では俺達の敵になってしまった。倒さなければならない。だけど二人にとっては大切な存在だ。本当は戦いたくもないはずだ。無理もない。でも向こうはもう覚悟してきている。迷っていたらきっと危ない目にあう。この前のようにな」

そう言われ、ヘリオスはこの前のディオンとの戦いがまざまざと蘇ってきた。親友だったはずなのに、彼は初対面の敵と相対するかのように冷酷だった。ヘリオスの呼びかけにも唾を吐きかけるような表情で、一瞬応じただけだった。

「ディオンは。ずっと昔からの友達だったんだ。面白い事や新しい事が大好きで、自分の腕を試したくていつも村の外に出たがっていた。少し見栄っ張りな所があって、よく喧嘩もしたけど、でもいつもお互い何かあったら…」

彼はそう言いかけて震え始めた。

「何かあったら助け合ってきた。どうしてディオンは、俺の敵になってしまったんだろう」

ルミエールは彼の肩をバンバンと容赦なく叩いた。

「もう考えるな。今度会ったら盛大に喧嘩して負かしてやろうぜ。そして捕まえたらお前の今の気持ちを全部話してやれ。そしたらディオンも何か答えてくれるはずだ」

ルミエールにはそうやって慰めることしかできなかった。ヘリオスは黙って頷いた。

 その時、突然の館内アナウンスが響き渡り、イーサンの声がした。

「緊急、緊急!アウダス隊のメンバーは至急飛空挺前に集まってください。繰り返します。アウダス隊のメンバーは至急飛空挺前に集まってください!」

二人はそのアナウンスで弾かれたように立ち上がると、急いで中庭を後にした。

 

 

つづく

 ただひとEP26(2)

 

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