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小説 ただひと EP25-2 飛空艇

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

御石→ミセキ

黒奇石→コッキセキ

 

EP25-2 飛空艇

 

 学都につくと、一行は大通り沿いに進んでいった。学都の中心に巨大な総合研究所がある。知の達人ソロンもその中に研究所を持っていた。

 入口まで行くと、守衛がアウダスを見て驚いたように言った。

「力の達人アウダスではありませんか。いやお久しぶりです。でもあいにく知の達人ソロンはもうここにはいませんよ」

「分かっている。ただソロンの研究について情報を得たくて来たんだ。入っても構わないか?」

「ええ、あなた達兄弟には非常にお世話になっておりますから。拒む理由なんてありませんよ」

守衛は慇懃に礼をして門を開けた。

 アウダスは学者たちに非常に歓迎された。彼がというよりもソロンの兄弟だからということらしい。ここ学都でのソロンの地位は不動のもののようだった。彼を敬愛するものは多く、最近の挙動についてもきっと何かの間違いだとか何かわけがあるのだろうとか養護する声が多かった。

 

ヘリオスはエリヤが石を取り出して見ているので声をかけた。

「エリヤ、どうした?」

「御石の様子がおかしい」

エリヤは首から下げた石を両手ですくうように持って答えた。

「じゃあ近くに石があるのかしら」

セレーネもエリヤの石を見た。

「いや、違うと思う」

そこへ車いすにのった一人の男が近づいてきた。

「あ!これ黒奇石じゃないか!」

男は驚いたように石を見て叫んだ。長い上着が腰の下まで伸びている。だが足がないのかその下はそのまま車いすになっていた。エリヤは彼を見るなり不思議そうに尋ねた。

「あなた、足はどうしたの?怪我や戦で失ったの?」

その質問に一同は冷や汗をかいた。ルミエールがすぐさまエリヤの口を封じて後ろに追いやろうとする。しかし車いすの男はあっけらかんとして答えた。

「ううん。僕は生まれつきみんなのように足が無かったんだ。良いよ、全然気にしてないから。だって僕はどうすれば足を作れるのかなって考えて、今では自分で作った足をもってるんだから、ほら」

男が車椅子のボタンを押すとたちまち変形して男の足になった。立つとちょうどアウダスより少し低いくらいでかなりの長身だった。

「しかもね、走ったり飛びあがったりすることも出来るんだよ。運動選手並みにすごいんだから。それにこの技術のおかげで同じような境遇の人のためにも作ってあげることができる。君が言う通り事故や戦争で手足を失う人はけっこう多いんだよ。だから僕は生まれた時にチャンスをもらったって思ってるけどね。あーでもね、二足歩行ってけっこう負担がかかるから普段は車椅子で移動してるんだ。あれ疲れるよ。みんなよくずっと二足歩行でいられるよね」

男は自分の足を自慢げに見せていたが、すぐにボタンを押して最初の車いすの形に戻った。

ヘリオス達は予想外のことに驚いていたが、男は思い出したように石の話に戻った。

「ところでその石、森の民の聖域にしかない黒奇石じゃないかい?」

「そうだけど、一体何なの?」

エリヤが訝しげに尋ねた。

「おっとこれは失礼。石に巡り合えてつい興奮してしまった。僕はイーサン。この学都で研究する科学者兼技術者だ。専門は航空工学だよ。僕は子供の頃から空を飛ぶことが夢で、いつか鳥みたいに高いところまで行ってみたくてね、だから飛空艇を作ったんだけど、森の民がその動力になる石をくれなくてずっと困ってたんだ」

「ひくうてい?なにそれ」

エリヤは彼の話では何が何だかちんぷんかんぷんらしく、さらに怪訝な目で彼を見た。イーサンはエリヤが飛空艇について尋ねたので待ってましたとばかりに目を輝かせた。

「あ、飛空艇見る?ていうかぜひ見てよ」

そういうとイーサンは皆を問答無用で一同を案内した。

研究施設のはずれにある巨大な倉庫のようなところにそれはあった。

 幅30メートルはある。翼はあるものの巨大な家のようでもあり白い外壁といくつもの窓が光っている。一度も使われていないせいかどこもピカピカだった。

「これは空の旅ができるタイプの飛空挺なんだ。もし災害が起きた時には空のシェルターにもなる」

イーサンが自慢げに話した。

 エリヤは胸から下げていた石を取り出した。

「どうしたんだろう。石が反応してる。イーサン、この飛空挺にはほかに同じ石はない?」

「うん、ないよ。だから困ってるんだけど…。あ、もしかしたら動力部に反応してるのかもしれないね」

「それはなに?」

「案内するよ」

イーサンは飛空挺に乗り込んだ。そして飛空挺の心臓部にまで案内した。そこには様々な機械があり、その中心に光る装置があった。

「これは黒奇石のエネルギーを増幅させる機械だ。もしかしたらこれに石が反応してるのかもしれない」

エリヤの石はもう傍目から見ても明らかに震えていた。

「なんだろう、この感じ。石がこの場所を教えていたみたい。イーサン、石をここにおけばいいの?」

「え?そうだけど」

エリヤは増幅装置に石を置いた。すると突然様々な装置にエネルギーが行き渡り、飛空挺全体に生命が行き渡ったかのように音を上げて動き始めた。

「わぁ、すごい!飛空挺が動き始めた!」

イーサンは手を叩いて喜んだ。

飛空挺はまるでうずうずしているかのように振動し始めた。

「黒奇石のせいかまるで飛空挺が生まれ変わったみたいだ。動きたくて仕方ないみたいだ。そうだみんな、飛んでみよう。この飛空挺アイオーンと一緒に」

イーサンは操縦席について装置をいじり始めた。

「そうだよな、こんな倉庫にいたら狭くて仕方ないよね。飛ぼう、アイオーン。僕らなら飛べる!」

それに答えるかのように飛空挺がふわりと浮いた。倉庫の天蓋が両の手を開くように開いていく。そして高い空が見え、飛空挺アイオーンはその中へ吸い込まれるように飛び上がった。

「わあ!飛んだ!飛んだよ!アイオーンも、僕も!」

イーサンは両手を挙げて喜んだ。しかしその喜びも束の間計器に乱れが生じ始めなにかのブザーがけたたましくなり始めた。

「わあ、こんな時に。みんなつかまってて!気流がおかしいみたいだ。今日のところは一度倉庫に戻ろう。アイオーンの調子も整えて乱気流にも耐えられるように改善するから」

イーサンはそういうと素早く機器に触れ操縦し始めた。アイオーンが左右上下に揺れ、その度に皆振り回された。ようやく倉庫に戻ることができたときには皆が胸をなでおろした。

ルミエールがぐったりとした表情でアイオーンのタラップから降りてきた。

「死ぬかと思ったぜ」

ヘリオスも同様にげっそりしていた。アウダスとエリヤだけが何食わぬ顔で降りた。

「あんなもの、馬に乗るのと大差ないじゃない。なにをそんなに大袈裟に言っているの?」

エリヤが呆れたように言った。しかしその後ろから出てきたイーサンもやや青白い顔になっていた。

「いやーごめん。気流の乱れに付き合わせてしまって。今度乗るときはもっと安心して乗れるように自動平衡装置をつけるようにするよ」

イーサンは石をエリヤに返した。

「ありがとうエリヤ。僕の夢が叶った。ずっと頭の中だけで空を飛ぶことを夢見ていたんだ。でも君のおかげで僕もアイオーンも空を飛ぶことができた。本当に感謝している。もし良ければなんだけど、また石を貸してくれないかな」

「この石は私達の宝だからあなたに貸すことはできないわ。でも私が一緒にのりこめば問題ないわね。イーサン、また飛ぶ時にはもっといいものにしてね」

その返答でイーサンは目を輝かせて何度も頷いた。

「勿論、勿論だよ!次はもっと良いものにするから、絶対乗ってね!」

「ところでなんだが」

アウダスが口を挟んだ。

「俺たちはソロンについて調べようと思ってここに来たんだが、なにか知らないか?」

「え、ソロンさん?あ、そっか。あなたはソロンさんの兄弟か。ごめん、話では聞いていたけど本当に見た目も違うんだね。いいよ、せっかくこんなに付き合ってくれたんだから、部屋まで案内するよ」

イーサンは車椅子を操縦して皆を先導した。

 

 

つづく

 ただひとEP25-3

 

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