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小説 ただひと EP25-1 死の湖

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP25-1 死の湖

 

 エリヤは石を取り戻すために森を離れてヘリオス達と共に行くことになった。排他的な森の民の多くはそれにやや否定的だったが、最後にはエリヤの熱意と宝を取り戻すという大義から了承した。

 彼女はいつも石を大切そうに首から下げた袋にいれていた。エリヤによると、この石と同じ石が近くにあれば反応するのだという。 セレーネは森の民の石に強い関心を示した。見たところ少し輝いてはいるがただの黒い石なので、彼女が何故そんなに石に興味を示すのか、ヘリオスにも分からなかったし他の者にも分からなかった。ただエリヤだけが、石の価値をわかってくれる外の人間がいると知って喜んでいた。

エリヤは石を取り戻すという大義のために弓の稽古を欠かさず、朝はだいたいいつもその音から始まった。そしてアウダスが少しでも暇そうにしているとすぐに稽古相手になってくれとせがんだ。飛び道具を相手に稽古をと請われるアウダスをルミエールは「かわいそうに」と言って同情していたが、アウダスは嫌な顔一つせずにいつも辛抱強く相手をしていた。エリヤが自分の弱さから聖域を守れなかった悔しさが彼にはよくわかったからだった。

 

「ここから少し離れた場所に学都ステラがある。ソロンもかつてはそこで研究していた。もしかしたら何かわかるかもしれない」

アウダスは道を歩きながらその先を指さした。それにエリヤが渋い顔をした。

「あそこに行くまでには死の湖の脇を超えないといけない。あそこは危険よ。行くだけで病にかかるかもしれない」

「だがそこに行かなければソロンの事を知ることはできない。ステラに行けばその石がどこへ持ち去られたのか、何のために奪われたのか知る手がかりも見つかるかもしれない」

アウダスの言葉にエリヤもしぶしぶ頷いた。

「死の湖ってどんな所なんですか?」

ヘリオスが尋ねた。

「強い毒性をもった水があふれている場所だ。どうしてそうなったのか未だに分からない。学都でも研究者らがずっと研究しているが、原因も解決策も未だ見つかっていない。そのせいで湖の周りには誰も住めないようになっている」

それを聞いてヘリオスは慌てた。

「そんな危険なところに行くんですか?セレーネに何かあったら…」

ヘリオスはセレーネの方を心配そうに見た。するとセレーネがマナに何か合図をして抱きかかえてもらった。

「ありがとうヘリオス。でも私は大丈夫よ。マナも傍にいてくれるからきっと倒れてしまうような事はないわ」

ヘリオス、僕がいるから大丈夫だよ」

ヘリオスは二人の様子を見てもまだ心配だったが、本人がそう言うので仕方なく頷いた。

アウダスはヘリオスの心配ももっともだと思ったものの、そうする以外に道もないので

「セレーネには少し辛いかもしれない。だができる限り早く通り過ぎるようにしよう」

と言った。

 

 死の湖に近づき始めると、空が黒くよどみ微かな異臭が漂ってきた。そして更に近づきはじめるとぽつぽつと黒い雨が降り始めた。

「みんな、この雨に長時間触れると危ない」

アウダスが注意を促した。運悪く今日は毒性の強い雨が降ってきた。一同は事前に買っておいた傘をさした。エリヤは傘をさすだけでなく鼻までつまんで顔をしかめている。

「ここは、死のにおいがする…」

嗅いだことのない異様なにおいが湖から漂っていた。草木は一切なく、砂利だらけの湖畔が続いている。

 それをセレーネは呆然とした様子で見ていた。

「この汚染は、まるであの工場にそっくりだわ…」

セレーネは自分の記憶をたどっていた。セレーネのいた世界に古くからある工場の周りも同じように汚染されて誰も近づけなくなっている。

「セレーネどうかした?」

マナが尋ねた。

「ここは私のいた世界にそっくりだなって思ったの。でも何となくそう思うだけだから…。ううん、なんでもない」

 

 

つづく

 ただひとEP25-2

 

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