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小説 ただひと EP24 森の民

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP24 森の民

 

知の達人ソロンが消え、イルノク村には再び人が戻ってきた。しかし畑を無残な姿にされ、村人達は行き場のない悲しみとやるせなさからアウダスを責め立てた。彼がやった訳ではなかったが、アウダスはそれを甘んじて受けていた。ソロンの兄弟というだけで石をも投げられそうな怒りに囲まれた。アウダスがその場に居続けても村人の怒りに油を注ぐだけなので、ヘリオス達は村を離れることにした。

 

人気もまばらな街道の先を見ながらアウダスは地図に線を引きながら皆に声をかけた。

「ディートリヒの予測ではこの先の学都周辺のエリアにソロンが現れるはずだ。学都までは遠い。みんな疲れていないか?」

「いいえ。私は大丈夫。みんなは?」

セレーネが他のメンバーの顔を見た。

「セレーネが大丈夫ならみんな大丈夫だろう」

ルミエールは疲れなど感じていないという風に大きな荷物を掲げて答えた。

「うん、僕も大丈夫。ヘリオスは?」

「ここで俺だけ疲れているなんて言ったら変だろう?勿論大丈夫。むしろセレーネが疲れてなくて良かった」

アウダスは皆の顔を見渡して安堵したように頷いた。

「そうか。ではもう少し歩こう。この辺りは森の民のテリトリーになる。旅の者を泊めてくれるような宿もない。もし薬や食料が足りなくなったら村に入って少し分けてもらえないか交渉することになるが、森の民は排他的な所がある。些細なことでも衝突が起きかねない。できる限りこの辺は早く通り過ぎたい。しばらくは野宿だ」

アウダスは地図をしまった。彼の言う森の民というのは、この辺りに住む先住民の事だった。独自の文化を持っていて、外の者に対する警戒心が非常に強く好戦的な所がある。無理に村に入ろうとするとただちに戦いが始まってしまう。そのくらい外との接触を拒む人々なので、アウダスも無駄ないざこざは避けたかった。

2日ほど一行は道沿いに歩いていった。しかし食料と水が不足し始め、補充をするためにもアウダスは仕方なしに森の民の住む村に行くことにした。

それは濃い葉のしげる鬱蒼とした森の奥にある。ヘリオス達はやや緊張しながら森に入ったのだが、アウダスが散々脅した割には誰も出てこなかった。

「妙だな。旅の者が森に入れば守衛が出てくるはずだが…」

アウダスも怪訝そうに辺りを見渡しながら進んだ。そしてしばらく進んだところで始めて森の民に遭遇した。それは独特な衣装に身を包み槍を持った兵士のようだったが、血だらけで、かすかな息だけをしていた。

「おい、一体どうしたんだ!」

ルミエールが兵士を抱き起こした。兵士は苦しそうに何か喋ろうとするので、マナが治療をした。

「魔物が来て、巫女が、御石が危ない」

兵士は道の奥を指差した。見るとその向こうにも多くの兵士が倒れている。

「なんてことだ!森の民が襲われるなんて!」

アウダスは兵士の言葉で全てを理解したのかすぐに立ち上がった。兵士は自力で立ち上がると

「俺はいい。早く聖所へ行って、巫女を、御石を、守ってくれ」

とアウダス達に訴えた。

「わかった。魔物は俺達が掃討する。行くぞ」

アウダスは森の民の指した方へ向かった。道の脇に多くの兵士が倒れていた。皆手に武器を持ち、何かに抗った証として傷を受けていた。森の民は皆武術の心得があり、そう簡単に外部の者の侵入を許すような人々ではなかったが、余程の手練れか強力な魔物の攻勢にあったのか防ぎきれなかったようだ。

アウダスは以前将軍職についていた時に訪れた経験から、道をよく心得ているようで、途中何度も枝分かれした道に遭遇したが、迷うことなく兵士の言う聖所を目指して進んでいった。

「森の民の石を狙うなんて…ソロンなのか?」

アウダスは苦しげに呟いた。森の民の石は希少性が高く、特に学術研究者の間では昔から尊ばれてきた。ソロンが目をつけてもおかしくはなかったが、彼は心底それを信じたくなかった。

 

 

 

つづく

ただひとEP24(2)

 

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