小説イラストレーター蒼生のなんでもやってみるブログ

小説家兼イラストレーターの蒼生が気ままに書いているブログ。Twitter https://twitter.com/sousei0303 mail: sousei_novel@yahoo.co.jp

小説 ただひと EP23 知の達人を追って

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP23 知の達人を追って

 

 翌朝、ヘリオス達は酒場で得た情報をもとに知の達人が現れたという場所へ向かっていた。話によると、数日前突如知の達人が巨大なゴーレムと共に現れ、魔物達を使って近くのイルノク村を占拠し、村人を一人残らず追い出したというのだ。それを聞いたアウダスは耳を疑った。そしてソロンがそんな事をするはずがないと言って何度も男に確認していた。しかし、確かめれば確かめるほど間違いなくソロンだという確信だけが増していき、ついには彼も黙ってしまった。

アウダスは昨日から言葉少なになっている。間違いなくソロンの事が原因だった。兄弟が人々の生活を壊している。その事実が責任感の強いアウダスに強い負い目を感じさせていた。ヘリオス達は彼を前になんと言葉をかけていいやら分からずただ黙って見守るしかなかった。

 

 一行が地図を手に西へと進んでいる時だった。家族と思しき数人の男女が荷車を引いて道の向こうからやって来た。その中の若い女性がヘリオス達を見るなり声を上げて駆け寄って来た。

「助けてください!」

「一体どうしたんです?」

驚くヘリオスに女性はすがりついた。

「魔物達が突然村にやってきて、村が、村が奪われたんです!私達もこうしてわずかな家財だけを持って逃れてきたんですが…ああ、これからどうすればいいのか」

「それはソロンが現れたというイルノク村か?」

それを聞いたアウダスが尋ねた。

「あ!あなたは力の達人。そうです。あなたの兄弟が、知の達人が私達の村を乗っ取ったんですよ!返してください!あの人を止めて、村を、わたし達の家を返してください!」

女性は憤りと悔しさから声を濁らせ、ついには顔を覆って泣き始めた。後ろの家族も暗い顔でしくしくと泣いている。ヘリオスは女性を労わるように手を取った。

「わかりました。安心してください。俺達が必ず知の達人を止めて村を取り戻してみせます。村はここから近いのですか?」

「ええ、この道をまっすぐ行けばすぐです」

「分かりました。この先の村で待っていてください。宿屋もあります。だから今は俺達に任せて、ゆっくり体を休めてください」

ヘリオスの言葉で女性も少し安心したのかこくりと頷いた。

「わかりました…。きっと、きっとですよ。私達の村を取り返してくださいね」

家族は不安げに何度か振り返っていたが最後には荷車を引いて去って行った。

 アウダスは思いつめた表情をしていた。兄弟の無慈悲な仕打ちで村を追われた人々の悲嘆が、彼の胸に刺さっているようだった。アウダスは全員を見渡すと言った。

ヘリオス、ルミエール、セレーネ、マナ。ソロンを止めるぞ!」

「はい!行きましょう。あの人達が早く帰って来られるように」

ヘリオスが真っ先に答えた。それにマナやセレーネも続く。しかしルミエールは逆に張り詰めた様子のアウダスを心配していた。

「アウダス、もしソロンが…」

だがアウダスは「問題ない」と言ってそれを遮った。

「俺は相手が誰だろうと任務を遂行する。急ごう」

ルミエールもそれ以上は何も言わず「わかった。行こう」と言って頷いた。

 

 

 

つづく

 ただひとEP23(2)

 

YOUTUBE朗読版 

www.youtube.com


ツイッター  

twitter.com