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小説 ただひと  EP21 魔物使い(3)

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 EP21 魔物使い(3)


 ヘリオス達はトリノ一家からもらった地図と笛を使って森の中を進んでいった。途中何度も危ない目にあったがマナの力でなんとかやり過ごすことができた。

 ヘリオストリノがペトラ病の特効薬のために魔物を捕まえようとしていたというのが気になってアウダスに尋ねた。

「その、石化させる魔物を捕まえるとなんでペトラ病は治るんですか?」

「石化させる能力がある魔物には、自分は石化しないように体内に特殊な酵素をもっているらしい。それがペトラ病の重度の患者には効果があるらしいんだ。でもどうしてそんな事を聞く?」

「俺の母さんがペトラ病で。まだ初期の段階なんです。でもペトラ病がすすんだら皮膚や関節が硬化して、最後には内臓までそうなってしまうって聞いたから」

それを聞いてアウダスはなるほどと言った顔で頷いた。

「そういわれている。でもその特効薬は病状を遅らせることはできても、完治させることはできないんだ。しかも驚くほど値が高い。まあ危険を考えれば納得の値段だが、普通の人間が買えるような代物ではない」

「そうなんだ…」

アウダスは彼に変な期待を与えないよう事実を述べた。ヘリオスは残念そうだった。セレーネは彼が意気消沈しているのを見て励まそうとした。

ヘリオス。もしかしたら他の方法で治るかもしれないじゃない。だって…」

そう言いかけて彼女は慌てて口を閉じた。つい言ってしまいそうになったからだ。ルミエールも彼が何か変なことを考えていると察して口を開いた。

ヘリオス。ペトラ病はまだ原因も何もわからない病気だ。とにかくいい水といい食べ物を食べていたら進行を遅らせる事ができるんだから、そうするしかない。だからこれから魔物が現れても捕まえようなんて考えるなよ」

「あぁ」

ヘリオスはルミエールにくぎを刺されて頷いた。

 

 そして地図通りに行けばもう少しで出口というところで突然奇妙な声が聞こえはじめた。きりきりと高い、何かの鳴き声のようだった。

「なに?」

セレーネは杖を握りしめて辺りを見渡した。

「何か、来る」

地響きが近づいてきて、巨大なトカゲのような魔物がヘリオス達の前に飛び降りてきた。

「こいつ、石化させる魔物だ。しかも桁違いにデカイ」

魔物は例の声でキリキリと泣いた。すると辺りから何匹も同じ種族と思われる小さな魔物達が現れ一同を取り囲んだ。

「みんな気をつけろ!こいつら全部石化の技を使ってくるぞ!」

ルミエールが叫んだ瞬間、小さなトカゲがネバネバとした粘液を吐き出してきた。危ういところでそれをかわしたルミエールだったが、粘液がかかった木の幹は蒸気を発して瞬く間に石になった。ルミエールはすぐさま態勢を立て直し、その魔物に斬りかかった。剣の先が胴体を両断し、魔物は高い声を発して倒れた。アウダスも襲いかかってくる小さな魔物達を切り伏せながら叫んだ。

「近接攻撃は危ない。セレーネ、後ろから援護を頼む」

「はい」

アウダスの指示にセレーネが頷くと、杖を掲げて呪文を唱えはじめた。彼女の杖の先に光が集まり、それを振り下ろした瞬間、無数の光が放たれ魔物にむかって飛んでいく。そして命中するたびに小さな魔物達は高い声をあげて倒れていった。一番大きな魔物は次々と降りかかる光の弾に怯んで小さくなった。

「いまだ!」

ヘリオスが駆け出して親玉と思われる魔物に斬りかかる。魔物は奇声を発すると無防備にひっくり返り手足をばたつかせた。彼はこの状態なら捕まえられるのではないかと思った。今ここで生け捕ればペトラ病の特効薬の原材料がたくさん手に入る。そんな考えが巡ってしまって彼は剣を止めてしまった。そのすきに、魔物はぐるんと首をもたげてヘリオスめがけて粘液を浴びせかけた。

「あ、ヘリオス!」

セレーネが思わず口を塞いだ。彼はすんでのところで避けようとしたものの足にかかった粘液は見る間に彼を石に変えていく。体の一部が石になっていくせいでその場から逃れることもできずにいたその時、アウダスが彼を抱えて魔物から遠ざけた。

「だから言っただろう!近接攻撃は危ないと」

「すみません、油断していました」

アウダスは彼をマナのすぐそばに下ろす。

「マナ、頼む」

「うん。まかせて」

マナは彼の足に手を当て石化を解いていく。まだ全身が石に変わっていなかったため、石化もすぐに解くことができた。だが、そうやっているうちに例のトカゲのような魔物は自力で起き上がっていつでも攻撃を仕掛けられるように口を大きく開けてその隙を狙っている。アウダスは間合いを取りながらマナ達を庇った。

ヘリオス、ルミエール、今はセレーネの魔法を頼った方がいい。俺たちはそれに合わせて攻撃をするんだ。いいか、魔物に狙いを定めさせてはいけない。三方向から斬りかかるんだ」

「はい!」

アウダスの指示により三人は散った。そして、セレーネが再び光の魔法を唱えはじめ、それが魔物めがけて飛んでいくのに合わせて、それぞれ別の方角から斬りかかった。魔物は狙いを定められずに混乱し、その間にセレーネの光の球が命中する。魔物は奇声を発して逃げようとしたが、横腹から飛びかかったヘリオスの攻撃が命中しついに動かなくなった。だらんと空いた口から緑色の粘液が垂れている。

「まったくひどい戦いだった。あのトリノが石化していたのも頷ける」

アウダスは剣をしまいながら呟いた。

「僕もうこんなところ嫌だよ。早く出よう!」

「そうね。もうすぐ出口のはずだからもう少し頑張りましょう」

セレーネがマナを気遣うように腕をさすった。この森にいる間中マナは力を酷使して相当疲れていたからだ。土地に詳しいルミエールは地図を片手にみんなを励ました。

「そうだな。俺もここはうんざりだ。どこか町に着いたら休もう」

ヘリオスは最後に惜しそうに魔物の死骸を見た。それを見て察したルミエールが背中を軽くたたいた。そして彼らは森を抜けた。

 

 

つづく

 ただひとEP22

 

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