小説イラストレーター蒼生のなんでもやってみるブログ

小説家兼イラストレーターの蒼生が気ままに書いているブログ。Twitter https://twitter.com/sousei0303 mail: sousei_novel@yahoo.co.jp

小説 ただひと EP20-2 決断

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP20-2 決断

 

 ディオンの裏切りが判明した後も各地で知の達人の目撃情報が後をたたなかった。しかし今の不安定な情勢の首都を長く離れるわけにもいかず、アウダスはそれらの報告を黙って聞くしかなかった。しかし彼の中でも何か手を打たなければならないという焦りはあった。そしてある日、アウダスは自分の考えを語るべくディートリヒを呼んだ。

「将軍、ディートリヒ参りました」

ディートリヒが部屋に入ってきた。アウダスは書斎の椅子に腰かけたままの状態で彼女の敬礼を受けた。

「ディートリヒ、話があって呼んだ。大切な話だ」

「はい、なんでしょう」

「ソロンの活動が活発化している。最近はかなり遠くにも現れるようになった。できればソロンを止める部隊と国内に残る部隊を分けたい」

「それは私も同意見です。しかし今は別動隊に割ける人員は限られています。しかも遠方に現れたとなると補給路も考えなければなりません。今の状況では無理です」

「だが、その両方を解決する方法があるとすれば?」

「といいますと」

「俺とヘリオス達でソロンを追う。そしてディートリヒ、お前が将軍になり軍の指揮をとるんだ」

「え?」

ディートリヒは彼の言葉に耳を疑った。

「数人の部隊なら補給路を確保せずとも現地で事足りる。それに俺がソロンを追えば多くの兵士を割く必要もなくなる。今の不安定な国を守り、ソロンの動きを止めるにはそれしかない」 

「ですが将軍、私には荷が重すぎます」

「何を言う。お前の的確な状況判断能力や策に勝るものはない。今は体制が代わった直後の一番不安定な時期だ。だからこそ、国軍の指揮にはお前のような者がふさわしい。今の様々なリスクを抱える国の中で、大所高所から軍を指揮できるのはお前しかいない」

「しかし私に全軍を指揮するなど、兵士達がついてくるでしょうか」

彼女は明らかに不安を抱いているようだった。アウダスは彼女の気持ちを受け止めるように静かに頷いてから口を開いた。

「ディートリヒ、お前は最初出会ったとき男のようになろうとしていたな。そうすることで見くびられないようにしようとしていた。だがお前が男のように振舞おうとしても単なる真似事でしかない。腕力ではお前は多くの兵士に劣る。それでも男社会で出世するためにはそうしなければならないと思っていたようだった。自分の特性を忘れているようだった。けれど昔も言ったように性差による優劣などない。上に立つ者に必要なのは腕力ではないことくらい、今のお前なら分かるはずだ。お前には優れた頭脳がある。鋭い洞察力がある。俺は今までその能力を買ってきた。お前の状況判断能力と作戦の数々があればこそ、俺の力も活かされてきた。兵士の犠牲も最小限にする事ができた。それでももしお前に不足の部分があると思うのなら、その知恵で埋め合わせてくれ。もし、力が足りないと思うのなら、その策で兵士達を動かし協力をあおいでくれ。そして今こそその能力でこの生

まれ変わったばかりの国に仕えてくれ」

「ですが…!」

「俺は他の誰でもなく、お前に頼んでいるんだ」

アウダスは弱気なディートリヒに決断を迫った。ディートリヒは彼の強い言葉に押され、ついには首肯した。

「わかりました。不肖ディートリヒ、その任拝命いたします」

「よし、任せたぞ」

アウダスは彼女の決意を支えるように深い信頼のまなざしを向けた。

 

 

つづく

 ただひとEP20-2(2)

 

YOUTUBE朗読版 

www.youtube.com


ツイッター  

twitter.com