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小説 ただひと  EP20-1 裏切り(2)

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 EP20-1 裏切り(2)

 

 ディオンは作戦会議が終わると、野営地をこっそりと抜け出した。それを見ていたヘリオスは首を傾げた。そしてどこへ向かうのかと不思議に思い、危ないので急いで彼の後をついていった。

 誰もいない場所まで来ると ディオンはポケットから小さな箱を取り出した。中には白い蝶が入っていて、彼はその蝶にぼそぼそと話しかけた。

「知の達人に伝えてくれ。明日、昼前にアウダス将軍率いる軍がそちらへ向かう。東の街道を使うようなので西南へ逃げてください。北側にも伏兵がいます。気をつけて」

白い蝶は彼の言葉に反応するように羽ばたくと次の瞬間には光となって消えた。

 ヘリオスは耳を疑った。そして衝動的に彼の名前を呼んでいた。ディオンがぎくりと体を震わせて振り向く。

「どういうことだ…?」

ヘリオスの「嘘だろう?」という追及の目が彼に向けられる。それにディオンは乾いた笑いで答えた。

「…はは、お前が思っている通りだよ。俺が全て情報を流していたんだ。つまりスパイだよ」

「なんで…」

「なんで?わからないよな。わからなくてもいいさ。お前はいい。お前は選ばれるだけの強さがある。選ばれるだけの素質がある。しかし俺は?…何もなかった」

「でも訓練のおかげで強く」

「訓練!?」

ヘリオスの言葉にディオンは吐き捨てるように言った。

「訓練でこんな技が使えると思うか?努力すればいきなり強くなれるとでも思うのか?馬鹿だな。これは俺の力じゃない。取引をして、知の達人が与えてくれた力だ。これは俺じゃない、あの人の力だ」

ヘリオスは言葉を失った。目の前にいる友人がまるで見知らぬ人のようだった。

「さあ、どうする。俺はスパイだ。俺はお前の口封じをしなきゃならない。だから、お前は俺をスパイとして刈り取れ」

ディオンは銃を構えるとすぐに攻撃してきた。ヘリオスは彼と戦いたくないばかりに攻撃を避けるので精一杯だった。とても彼に剣を向ける気になどなれない。

 騒ぎを聞きつけてルミエールやアウダス、そして二人がいなくなって心配していたセレーネとマナまでかけつけた。

「一体どうしたんだ!」

その数を見てディオンは舌打ちした。

「っち。どうも不利だ。ここは一旦引かせてもらうよ」

ディオンが口笛を吹くと、待っていたかのように空飛ぶ魔物が現れて彼のすぐ側まで飛んできた。ディオンは魔物の足に捕まると空高く舞い上がった。

「まて!」

ヘリオスの声にディオンは冷ややかな笑みを浮かべただけでそのまま飛び去ってしまった。

 アウダスはヘリオスに詰め寄った。

「何故野営地を抜け出して戦っていた。そして何故ディオンは俺たちを見て逃げたんだ」

ヘリオスはうまく答えられなかった。彼自身理解できずにいたからだ。

「ディオンが知の達人に連絡を取っていたのを聞きました」

その言葉に動揺が広がる。

「つまりあいつがこちらの情報を全て流していたのか…スパイが紛れ込んでいたとはな」

「そんな!なにか訳があって」

狼狽えるヘリオスの肩をルミエールが掴んだ。

「事実を受け止めろ。それからだ!」

ヘリオスは頷くものの、その後も夢であってほしいとどこかで願っていた。

 

 

つづく

 ただひとEP20-2

 

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