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小説 ただひと EP20-1 裏切り

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP20-1 裏切り

 

 王都はその後、さしたる混乱もなく以前より開かれた形で様々な改革が行われていった。まだ前世代の人々が生きていたこともあり、かつての民主国家のシステムを土台により力強く再生することができたからだ。軍は議会の下で国民のために動く、純粋な盾であり鉾となり、独裁を経た今、より改善が図られていった。急激な変化に困惑する兵士も少なからずいたが、概して新国家の行く末を明るく捉えていた。

 

 そんなある日、知の達人が首都の近くで多くの魔物を従えて突如現れたとの知らせが入ってきた。

 アウダス達はすぐさま出陣の許可を得て、ソロンを捕まえるべく急遽その場所を目指した。ソロンが目撃されたという場所は南の丘だった。近くには人家がまばらに点在しているためモンスターの出現は非常に厄介だった。ヘリオス達は道中民家を訪ねては逃げ遅れた人がいないか確認し、そうした人を見つけると兵士らに首都まで護送させた。

 

「段々魔物が強くなってくる…。ソロンが近いのかもしれない」

アウダスは剣を鞘に納めながらつぶやいた。傍には今しがた彼に切り伏せられた甲殻類のような装甲をまとったモンスターが倒れている。誰もがソロンの存在を予期していた。だから南の丘の麓に例の巨大なゴーレムの足跡が残っているのを見つけて一同は確信した。

「これって、あのゴーレムのものよね」

セレーネは足跡の淵に立って確めた。5メートルはありそうだった。大地の上に巨大な何かが立っていた事を裏付けるように深く窪んでいる。

「僕にそっくりなゴーレムがいるってみんな言ってたけど本当だったんだね。ここからは僕と同じエネルギーを感じるよ」

マナははしゃいでいるのか窪みの中を覗いたり手を伸ばして触れたりしている。

「え、じゃあやっぱり生命の土から出来てるのか?」

ヘリオスが驚いて尋ねた。

「うん、きっとそうだと思うよ。でもすごく強いエネルギーが残っているから僕とは生命の土の量が全然違うと思うな」

マナは嬉しそうだった。たった一人しかいないと言われていた自分に同じような仲間がいる事を知って喜んでいるのが傍目にもわかる。

「おい、今はそれどころじゃないだろ。もうすぐ知の達人が現れるかもしれないのに、もっと気をひきしめろ!」

ルミエールが注意した。マナは「はーい」と言って名残惜しそうにそこから離れた。

知の達人と以前戦った時は怪鳥を何匹も召喚され、近づくことさえできなかった。知の達人はそうやってモンスターに足止めをさせている間にどこかへ消えてしまう。同じ失敗を犯したくないアウダスは隊を二つに分けて戦おうと決めていた。

 だからアウダスとヘリオス、ルミエールが先に丘の頂へ向かい、セレーネ達が別方向からひそかに近づいた。一足先に頂上にたどり着いたアウダス達は、そこに足跡と妙な地上絵しか残されていないことに落胆した。確かにここに居たはずなのに去る時の足跡が全く見当たらない。まるでこの場所から突然消失してしまったかのようだった。

アウダスは丘の頂から裾野まで見渡しながら副官のディートリヒに尋ねた。

「ディートリヒ、これをどう思う」

「間違いなくここに居たのだと思います。しかし去る時の痕跡が見当たりません。ゴーレムの足跡すら残っていないのは奇妙ですね。何か特殊な魔法を用いたとか…。私は魔法にはあまり詳しくないのですが、この地上絵は何かの意味があるように見受けられます」

それでアウダスは仲間内で一番魔法に詳しいセレーネを呼んだ。

「セレーネ、これが何かわかるか」

「これは…たぶん一つではないと思うわ。他にもこういう魔法陣があって、全体で一つになるはずよ。だから、これだけ見てもよく分からないわ」

セレーネは首をかしげた。

「なるほど、他にもこういう物があると言うことか…」

「では以前知の達人が現れた場所にもそういった物がなかったか後で調べさせましょう。ですが将軍、今日は一旦兵を引いて次の作戦を練った方が良策です」

ディートリヒの進言にアウダスは頷き、全軍に指示を出した。

仕方なくその日は野営することになり、大小さまざまなテントが張られた。

 本部テントの中でディートリヒが机の上に地図を広げて穿つように見ている。その周りでヘリオスやディオン、ルミエールやマナ、セレーネ達が椅子に座って固唾を飲んで見守っている。そこへアウダスがやってきた。

「ディートリヒ、話というのは何だ?」

アウダスの問いに、彼女は顔を上げた。

「この丘は以前知の達人が現れた場所から山の峰伝いに弧を描いた線上にあります。もし今後も知の達人が魔方陣を作ろうとしているのなら、考えられるのはこのライン上です」

そう言ってディートリヒはコンパスで半円を描いた。その線が今まで神出鬼没だと思われていた知の達人の行動におぼろげな法則性をもたらした。

「だとして何の為に?」

ルミエールが尋ねる。

「それは分かりません。しかも、今後このライン上にいくつの魔法陣を作るのかも分かりません。これはまだ仮説ではありますが、前回と今回の位置関係からおおよその場所は見当がつきます」

ディートリヒは線上のある一点に印をつけた。

「次に知の達人が現れるとしたら、この場所である可能性が高い」

「分かった!では明日はそこに行ってみよう。ディートリヒ策を頼む」

「承知しました」

一通り聞いていたディオンはわずかに顔をしかめた。彼はその後も終始黙っていたが、何か思うところがある様子だった。

 

 

つづく

ただひとEP20-1(2)

 

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