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小説 ただひと EP19 蘇る法典

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP19 蘇る法典

 

 その後大法典が甦り、王都は王都ではなくなった。国民に主権が戻り人々の中から選出された議員達によって28年ぶりに議会が開かれる事になった。しかし議会はかつてユトレヒトによってうち壊されていたため、今はそれに代わる場所が城の中以外にない。幾人かの議員達はそれならばと、抑圧の象徴である城の中ではなく、人々と同じ空の下で式典を行おうと言い始め、最後には満場一致で決した。

 

街の大広場の奥に即席で作られた演台がある。議員達はその前に整列し、周りを何千という人々が取りかこんでいる。彼らは皆一様に期待と緊張の入り混じった面持ちで集まっている。

演台の上に以前包帯を巻いていた小柄な学者がのぼった。議員達はその姿を感極まった様子で見上げている。そして学者は手にしていた紙を読み上げはじめた。

「自由と権利は与えられるものではなく、我々のたゆまぬ努力で維持するものであり、人民の代表者達はこれを遵守し、決してこれに背信せぬことを誓い、常に自らを戒めこの国の人々のために仕えなければならない。大法典は、人民から委譲された権力を正しく行使させるべく、また我らを律する鎖となるためにここに蘇る」

その言葉が終わるやいなや、人々の中から歓声がわいた。この日この時を彼らは待ちわびていた。あまりにも多くの苦難があり、あまりにも多くの犠牲があった。彼らはようやく戻ってきた自由と権利をもう二度と手放さないことをその喜びの中で誓いあった。

 

そして式典が終わり、ルミエールはレジスタンスのメンバーを集めた。

「今まで本当にありがとう。感謝している。おかげでようやくこの国に自由が戻ってきた」

ルミエールはレジスタンスの面々を前に晴れやかな顔でつげた。彼を見るメンバーは皆一様に深い感慨を胸に涙ぐんでいる。

「この国は再び自由の国になった。だから俺たちの仕事は終わりだ。これからは一人一人がこの国の行方に責任をもって生きていかなければならない。一人一人がこの国の自由の守り手になるんだ。もう二度と結集しない事を誓おう。レジスタンスは今をもって解散だ!」

ルミエールの言葉に泣き出す者、感極まって彼に抱きつく者、側にいる者と喜びを分かち合う者。一つの苦しい時代が過ぎ去って新しい時代の訪れに皆が興奮していた。彼らはその喜びの中で今は亡き仲間達への感謝と新たな誓いを胸に刻んだ。

 

 

 

つづく

ただひとEP19(2)

 

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