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小説 ただひと EP17-4 ジェイス

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP17-4 ジェイス

 

ヘリオス達は王の間を目指して上へ上へと進んで行った。そして玉座のある大広間にたどり着いた一同は、そこに王ではなくジェイスがいることに目を疑った。

ジェイスは玉座に腰掛けていたが、アウダスの姿を見て背もたれから身を起こした。

「やあ、謀反人のお出ましだ」

「ジェイス、何故お前がここにいる…」

「何故って。国王のご命令ですから。それにね、あなたとは戦ってみたかったんですよ。私とあなたどっちが強いのか…はっきりさせたくてね。でも私は仮にも副将軍ですから、そうもいかなくて、毎日うずうずしてました。けれどずっと傍で見ていてわかりましたよ。あなたの弱点が。あなたは仲間をかばう。弱いものを助ける。そしてかばう時、あなたは一瞬防御が手薄になる。今日、ぞろぞろと雑魚を引き連れてきてるのは、ひょっとして私のためですか?」

「戯言を」

「まあいい。じわじわと痛めつけてあげますよ。そして国王陛下のためにも、謀反人を討ち取ってみせましょう」

ジェイスは剣を左右に振り、切り裂く風を発生させ一同を怯ませた。そしてすぐにセレーネに目をつけ攻撃を仕掛けようとした。

「させないぞ」

そばにいたヘリオスが彼女に振り下ろされた剣を防いだ。だが力ではジェイスの方が上手だったようで押しつぶされるように彼は体制を崩し始めた。

「君のような優しい男が居てくれると私も助かります」

「ジェイス!俺はここだぞ」

すぐにアウダスが加勢しようと駆けつけたので、彼はヘリオスから離れる際に斬りつけ怪我を負わせた。

「さあ、守ってください。そのかよわい少女と手負いの少年を」

ジェイスはニタニタと笑みをこぼす。

「おい、こっちもいるぜ!」

ディオンが放った水の魔弾が彼のとっさの剣さばきで直撃する前に砕けた。

「危ない危ない」

ジェイスがディオンを睨みつけた。

「雑魚は順番に片付けていきますので、少々お待ちいただけますか?」

ジェイスはヘリオス、セレーネを集中的に攻撃する。そしてアウダスが彼らを守ろうとして防御の構えを解いた時を狙って彼にも攻撃をしかける。ディオンの魔弾はジェイスを狙うものの、三人が近すぎて撃つことができない。彼は代わりに実弾を使ってジェイスを狙うが、音で見切られてしまう。ジェイスもアウダスほどではないとはいえ、相当の実力の持ち主だった。

アウダスは二人を同時に守ろうとして完全に体制を崩していた。ジェイスの思惑通りだった。アウダスはジェイスの攻撃を浴びつつもそれでも彼らを守ろうと体を張る。

「どうしてそんなに守るんですか?分かるでしょう?二人を見捨てればあなたは自分のことに専念できる。自分のためだけに戦える。そうすればこうやってむざむざと私の剣の餌食にならずに済む。本当は分かっているんでしょう?どうして雑魚のために自分を犠牲にするのですか?」

アウダスはジェイスからの攻撃で体力を削り取られ、息が上がっているのか答えることができずにいる。その間もジェイスの攻撃は止むことを知らない。

「それはお前みたいな奴には分からないことだよ」

ルミエールがセレーネとヘリオスを庇って加勢した。

「アウダス、二人は俺に任せてそいつだけに集中しろ」

「ああ!」

アウダスは一瞬剣を止めると力を溜めてからなぎ払った。ジェイスが大きく後退し、ヘリオスらと距離ができる。その瞬間を狙ってディオンが炎の魔弾を放つ。

「ぐ、こんなもの」

ジェイスは魔弾を剣で切り裂き散らしたものの、炎の熱でひるんだ。その隙にアウダスが残り火の間から一瞬で懐に入り一撃を加えた。ジェイスの体制がくずれた。が、すぐに立て直しその後は二人の剣が素早く交わり続けた。

「見えない、早すぎる」

ディオンは二人が斬り結ぶ様に目を凝らすこともできずにいた。

「そう、そうですよ。アウダス。私はこの瞬間を待って居た。あなたと私、どちらが強いのか今こそはっきりさせましょう!」

アウダスとジェイスは切りあいを続けているものの、弱っているとはいえやはりアウダスの方が優勢だった。だんだん追い詰められていくジェイスは起死回生の技を放つがうまくかわされてしまう。そしてアウダスの剣が彼の鎧を砕き剣を叩き落した。

「うっ…。ここまでか」

ジェイスは膝をついた。

「ジェイス、王はどこにいる」

アウダスは剣を彼に向けて尋ねた。それにジェイスは不気味な笑いを発した。

「くくく、あなたは私を前にしていながら今もまだ私を見ていない。王?知りませんよ。私はここを任されただけですから。それにしてもアウダス。ああ、悔しいですよ。命をかけて戦ったのに、あなたは最初から最後まで私のことを見ていなかった。今この期に及んでさえ。私はあなたにとって取るに足らない人間だったのですか?いや、そんなはずはない!だから…さあ、見てください。あなたの強さの前に散ったジェイスという男の事を」

ジェイスはアウダスの剣を握りしめると自分から心臓に突き立て絶命した。ヘリオス達はその様子に絶句した。

「ジェイス。お前は最後まで変わらなかったな」

アウダスは彼の亡骸を哀れみ、心臓から剣を抜いてやるとその目を閉じて横たえさせた。そして彼の剣を胸の上に置いてやり剣に生き剣に死んだ武人への礼をつくしてその場を去った。

 

 

つづく

 ただひとEP18

 

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