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小説 ただひと EP17-3 リヴァイアサン

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP17-3 リヴァイアサン

 

アウダスと合流したルミエールとヘリオス達は、国軍の施設を抜けて王城へと向かった。途中元兵士達が道案内をしたり門を開いてくれたりした。兵士や民間人の別なく今や人々は長年苦しめられてきたくびきから逃れ、自由を求める大きなうねりとなっていた。

ルミエールはポケットの中から写真入りのロケットを取り出した。昔アリシアと二人で映った写真がその中に収められている。彼はアリシアや今まで散っていった多くの仲間達の事を思い出しながら王城へと繋がる橋を渡った。彼らが払った犠牲の上に今自分が立っているのだと感じていた。それは彼だけではなかった。今ここに居るすべての者達が、失った仲間達から託された希望を自らのものとして背負い戦っていた。

 

途中までは兵士達の道案内ですんなり入れたものの、城の奥に進むにつれて様々なトラップに悩まされるようになった。元々今の王は合法的とはいえ、権力を簒奪した側であり、この城を建てるときもいつ権力が奪われるかと恐れて様々な仕掛けを設計の段階からとり入れていた。そのため、こうした事態に陥った今、城全体が巨大なネズミ捕りのようになっていた。アウダスもまさかこんなに城にトラップが仕掛けられていたとは知らなかったようで、見慣れた廊下を歩くにも用心して進んだ。それでも予想外の場所からトラップが発動したりして、ヘリオス達は幾度も危ない目にあっていた。

「おい、用心して進め」

ルミエールが先頭のヘリオスに声をかける。

「分かってる」

彼は怪しげな細い廊下をゆっくりと渡った。ようやく渡り終えると彼は手招きをし、次にルミエール、アウダスと進んだ。三人が渡り終えたその時、突然床が割れて三人は真っ逆さまに落ちていった。

ヘリオス!ルミエール!アウダス」

マナとセレーネ、ディオンが叫んだ。穴の底を見ると、三人は五十メートルほど下にいてなんとか無事だった。

「みんな、怪我はない?」

マナが叫んだ。

「大丈夫だ。三人はそこに居てくれ」

マナが誰か怪我をしていたらすぐにでも降りてこようとしていたのでヘリオスは止めた。というのも、落ちた先は四方が透明な壁で囲まれていてその向こうに三十メートルはある禍々しい姿の怪魚が悠々と泳いでいたからだ。三人は自分達がかなりまずいトラップに引っかかってしまった事を悟った。

「アウダス、裏切ったな」

「国王!」

何処からともなく国王の怒りに震える声がした。

「副将軍の言うとおり、貴様のような人間を傍に置いたのが間違いだった。私を裏切った罪、ここで償え。リヴァイアサン!」

国王の言葉と同時に壁がなくなり、水が四方からなだれ込んできて巨大な怪魚が彼らの前に現れた。それは国王の飼っているリヴァイアサンだった。リヴァイアサンは大きな口を広げて彼らを飲み込もうとする。ヘリオスがうまく泳げず逃れられずに居ると、アウダスがかばって、九死に一生を得た。水の中ではリヴァイアサンの動きは素早く、逆にヘリオスらは翻弄されている。しかも巨大なリヴァイアサンが動くと水流が発生するので、彼らは泳ごうにもうまく泳ぐことができない。ルミエールはなんとかダメージを与えようとサーベルを握りしめてリヴァイアサンに向かっていった。リヴァイアサンは鋭い牙の無数に生えた口を広げてルミエールを飲呑み込もうとする。一同が危ない!と思った時にはもう遅く、ルミエールはリヴァイアサンに呑み込まれていた。アウダスとヘリオスは彼を吐き出させようと斬りつけた。しかし、厚い鱗に阻まれて擦り傷しか与えられない。アウダス

は水の抵抗を受けて上手く奥義を使えずにいたが、鱗のないエラのあたりを狙って剣を突き立てた。リヴァイアサンは悶えて彼を振り払おうとする。リヴァイアサンは痛みのあまり水の中から飛び上がった。

「何あれ!」

セレーネ達はリヴァイアサンを見て仰天した。だがすぐに、ヘリオス達があの怪物と戦っているのだと分かりディオンは雷の魔弾を怪物めがけて放った。効果は抜群だったが、一緒にいたアウダスにまでダメージを与えてしまった。

「くそ、どうすればいいんだ」

三人はまた水中に潜って行くリヴァイアサンを黙って見ているしかなかった。

アウダスはリヴァイアサンの動きに翻弄されながらもなんとか突き立てた剣から傷口を大きくしようとした。リヴァイアサンが大きく暴れ、その拍子に彼は剣共々振り払われてしまう。

ヘリオスは彼に近づくと目を狙おうと彼に合図した。アウダスもそれに頷く。リヴァイアサンは激しく怒っているようで、アウダスめがけてまっすぐに向かってきた。ヘリオスとアウダスはリヴァイアサンの目を狙い剣を振るった。なんとか傷を与えたようで、リヴァイアサンの動きがおかしくなる。もう一息だと二人は思い、リヴァイアサンに攻撃を仕掛けようとした時、突然怪魚はのたうち始めた。ヘリオスやアウダスが与えた傷の痛みに耐えかねてというより、怪魚の内側に痛みの元があるような悶え方だった。よく見ると胴からルミエールのサーベルの切っ先が見えた。サーベルの姿はよりはっきりと見え始める。ルミエールが中から怪魚にダメージを与えているのが分かった。ヘリオスとアウダスは泳いでいきその部分めがけて剣を突き立てた。するとリヴァイアサンは真っ二つになり中からルミエールが出てきた。

怪魚は力尽きて水面にプカプカと浮いた。

心配して見ていたセレーネ達はどうなったのかと固唾を飲んで見守っていたがようやく三人が水面から顔を出したので声をあげて喜んだ。

セレーネ達は共闘する兵士たちに手伝ってもらい縄ばしごを下に垂らして彼らを救い出した。

ようやく上がってきた三人をマナが順番に治癒する。まずは一番体力を奪われていたルミエールだった。アウダスは彼のそばに行った。

「ルミエール、ありがとう。君の捨て身の勇気がなければ俺たち三人は全員あのリヴァイアサンの餌食になっていただろう」

「感謝されるほどの事じゃない。いつだって死ぬ覚悟だった。俺は、あんたが国王に背いて人々の側に付いてくれなければ、もしかすると城壁の外で消えていたかもしれない命なんだ。俺一人ではここまで来ることは絶対に出来なかった。俺の方こそ感謝している。…それにな、アウダス。人と戦うよりは怪物と戦う方がずっといいんだよ」

ルミエールは笑って答えた。

「アウダス、次は君の番だよ」

マナが彼に声をかけた。雷のダメージを間接的に受けて所々に火傷があるようだった。

「ああ、ありがとうマナ。でも今日一番頑張ったのは彼だから、もうしばらく彼のために力を使ってくれ」

 

 

つづく

ただひとEP17-4

 

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