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小説 ただひと  EP17-2 自由のために(2)

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 EP17-2 自由のために(2)

 

ルミエールは松明に照らされながら集まった人々に向かって静かに口を開いた。

「今日が最後だとは思わないでくれ。きっとすぐに手に入るものじゃない。今までも一人一人がそのために多くの犠牲を払ってきた。命を失った同志も大勢居た」

すすり泣く声がする。誰もが知り合いを友人を家族を失っていた。

「だから今日は、その長い道のりの一部だと考えてくれ。戦いは激しいことが予想される。だから命を失う覚悟がある者だけ来てくれ。けれど俺達が得るものは自分の子供達、そしてまだ見ぬ未来の同胞の財産となる。自分は得られないかもしれない。しかし、自分の家族とその子供達の未来のために、自由を残したいと思う者は俺についてきてくれ…!」

静かな同意が続く。

そして彼らは暗い道を城へ向かって歩きはじめた。

城に近づき始めると、幾つもの松明が揺らめくのが見えた。城の下には国軍の施設がある。幾人かの者が騒ぎ始めた。

「兄貴、あれはもしかしたら国軍なんじゃ…。いくらなんでも数が多すぎる。俺たちをあそこで食い止めようとしているんじゃ…」

しかしルミエールはアウダスの言葉を信じた。

「やばいよ兄貴!ダメだ!正面突破できる数じゃない!」

ますますハッキリと彼らの姿が見えてくる。松明の下できらめく甲冑の数々、何百?いや千?もしかしたらそれ以上いる。重武装の兵士達を前に、軽装備で安っぽい武器や防具で身を固めた人々は目の前に壁として立ちはだかる国軍の兵士達を見て早くも騒ぎ始めた。

「落ち着け!落ち着くんだ。俺はアウダスを信じる!目の前の兵士達が王の盾ではなく、俺たちの仲間だと信じる!」

ルミエール率いる隊は、十メートルほどの距離を取って自然に止まった。人々はいつ戦いが始まってもいいように武器を握りしめた。激しい緊張が走る。ルミエール自身も冷たい汗が背中を伝うのを感じた。もしアウダスが兵士達を抑えられなかったのだとしたら、目の前に立ちはだかる壁のような兵士達は全員敵だからだ。自分の命だけでなくこの場にいる全員の命が危なかった。

無限に感じられる沈黙が流れた。

しかしその時、兵士達が左右に分かれて彼らの前に道を開いた。そしてあのアウダスの声が響いた。

「今国軍は活動を停止している。ここに集まっているのは、諸君らと同じ思いを持つ一人一人に過ぎない。そして俺もただの一人の男としてここにいる」

「アウダス!」

ルミエールは彼の姿を見て叫んだ。暗闇の中から少しずつ見えてくる裏地の赤いマント。彼の姿が松明に照らされてはっきりと見えた。そしてアウダスは人々の間に横たわる距離を一人で歩いてきた。今度は彼が手を差し伸べた。

「ルミエール、俺たちは同じこの国の民だ。共に行こう」

その言葉で双方の隊が歓喜の声をあげた。ついさっきまで敵対していた人々は雪崩を打ってお互いの隊へと混ざり合い始めた。甲冑を着た人々も古い剣や猟銃を掲げる人々も本当は同じ国に住む同じ国民でもしかしたら親戚や友人、ひょっとすると家族だった。今や王の理不尽な呪縛から解き放たれ、人々は一丸となって王城へと向かい始めた。

 ルミエールはアウダスの手をがっしりと握り返すと「信じてたぜ、兄弟」と言った。

 

つづく

ただひとEP17-3

 

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