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小説 ただひと EP17-1 盾として

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP17-1 盾として

 

力の達人はマティアに説得され、王の命令を中断させた。そして、ヘリオスらに連れられて、反政府勢力のアジトに行く。しかし行ってみるとアジトの前に見たこともない巨大な熊のようなモンスターがいてルミエールたちと交戦していた。

「ダメだアニキ!このままじゃ全員やられちまう」

「くそ!この怪物、俺達じゃ手に負えない」

ルミエールや彼の仲間たちは懸命にそのモンスターを相手に戦っているが明らかに分が悪い。それを見たアウダスは信じられないというように眼を見張った。

ベヒモス…!」

「知ってるの?」

セレーネが驚いて彼に尋ねる。

「国王が飼っている生物兵器だ…。しかしあんなものを街に出したら…街が…」

「つまりそういうことだよ。鈍いなあ…」

ディオンが呆れたように言う。アウダスはその言葉を受けて悔しそうにうなずいた。

「くっ。そういうことなのか…。俺が仕えていたものは…。これで目が覚めた!ヘリオス、行くぞ!街を守るんだ」

 アウダスはいつもの俊足で怪物に近づくと飛び上ってベヒモスの眉間めがけて刀を振り下ろした。しかし怪物の方も腕でそれを防ぎ、切っ先は逸れて肩と腕に傷を負わせるくらいにしかならなかった。

「ああいうデカくてノロいのは俺の獲物だよ。どこを狙っても当たるからな」

ディオンは得意げに魔弾を放った。炎の魔弾は見事怪物の脳天に直撃した。しかしびくともしない。

「は?なんだあれ!今直撃しただろ!」

ベヒモスは魔法耐性がある。だから物理攻撃の半分以下の効果しか与えられないんだ」

アウダスはディオンとセレーネに向けて叫んだ。

「じゃあ、私たちの通常の魔法攻撃は効かないってこと?」

「なんだよ。じゃあまた猟師風情に逆戻りかよ」

ディオンは魔銃からいつもの銃に変えて狙いを定めた。次は確かにダメージを与えられたようでベヒモスはのけぞった。そのすきにアウダスやヘリオスやルミエールの攻撃が入る。

マナとセレーネはベヒモスの攻撃にさらされる三人の回復に努めていた。ベヒモスは何度剣撃を受けようともなかなか倒れない。それどころかさっきのディオンの技を真似て三人に攻撃をしかけてくる。

「おいおい魔法は受け付けないのにパクリはオーケーかよ。洒落にならないな。おい、セレーネ、あの怪物の動きを鈍くして魔法が使えないようにしてくれ」

「分かったわ」

セレーネは禁呪を唱え始め、それをベヒモスにぶつけた。途端に怪物の動きは鈍くなり、魔法を使うことができなくなった。

「よし今だ!」

ヘリオスとルミエールが同時にベヒモスの両足に深い傷を負わせ前のめりにさせた。そこに力の達人の渾身の一撃が入り、ようやく怪物は倒れた。

「こんな怪物を相手にしたのは初めてだ」

アウダスは珍しく肩で息をしていた。よほど彼にとっても激しい戦いだったのだろう。

 ルミエールは剣を持っていた手をズボンでふいて彼に差し伸べた。

「待ってたぜ!力の達人」

アウダスは思いもよらない言葉に戸惑った。少し前まで彼らは敵対し、弾圧する側とされる側だったのだから。しかし今ルミエールだけにとどまらず信頼と連帯の目が一斉に彼にむけられている。彼はそれでようやく自分が国民の側にいることを感じとった。

「俺は、この国に生きる人々の味方だ!」

その言葉に歓声が巻き起こる。

力の達人と反政府勢力のリーダーが手を取り合ったとき、マティアは目を細めて涙ぐんだ。

「ああ、ようやくこの国が以前のように戻るかもしれない」

歓声を上げて喜ぶ人々の中から、包帯を巻いた小柄な老人が出てくる。

「さあ。皆さん。喜びはそこまでですよ。これからが正念場です。死文化しているこの国の大法典を蘇らせ、王を退け我々の手に再び自由と権利を取り戻しましょう!」

その言葉に一層激しい歓声が巻き起こる。

「そのためには…」

包帯を巻いた老人は訴えるようにルミエールを見た。

「ああ、もう準備はできている」

「アニキ、俺達も覚悟はできてやす」

頭領は彼らにありがとうと言うように眼を閉じて肩に手を置いた。そして力の達人のほうに振り返って言った。

「アウダス将軍、あんたの部下達と、俺達は戦いたくない。同じこの国の仲間だ。大法典が蘇れば、明日からでも手を取り合って生きていける隣人だ。無用な憎しみ合いは避けたい。部下を抑えてくれ。分かってくれるな?」

「承知した。兵士たちも無慈悲な任務に辛い思いをしていた所だ。俺から言って聞かせよう。しかし、もしかすると幾人かは諸君らと協力することを選ぶかもしれない。…その時は構わないか?」

「もちろん!仲間は多いほうがいい!」

「そうか。了解した」

アウダスは頷き、反政府勢力のアジトから帰っていった。

 

 

つづく

 ただひとEP17-2

 

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