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小説 ただひと EP15 夜闇

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP15 夜闇

 

夜のとばりがおりて、その中を松明の炎がゆらめく。石畳の上を兵士達の軍靴が鳴り響く。国軍が反政府勢力の取り締まりを始めたのだ。

民家に押し入る兵士。所々で争う声が聞こえる。街の中は混乱しあちらこちらで叫び声が聞こえ始めた。

ヘリオスらは隠れながら、時に国軍の兵士達と交戦をしつつも力の達人を探した。兵士達も納得がいっていないのか、どこか無気力な者が複数見受けられた。そしてヘリオスが力の達人を止めると言って居場所を尋ねると喜んで教える者までいた。

「兵士達も不本意ながら動いているようね」

セレーネが小声で言った。

「そりゃあ国民を殺せなんて命令、喜んで聞くやつなんていないだろう」

ディオンが言った。

「でもなんでアウダスはこんなことをしてるんだろうね」

マナはただでさえ大きな体をできる限り小さくしようと縮こまりながら言った。それには誰も答えられなかった。唯一元代議士の老人だけが答えた。

「国軍が王の私兵に成り下がっているからだよ。彼らは国民のためではなく王のために動くようになってしまっている」

代議士は辛そうに言った。そして夜の街の中をヘリオスらを先導しながら歩いた。彼は長年この街に住んでいるらしくあらゆる道を知っているようだった。そしてできる限り兵士に出会わないように道を選んでいたが、たまに兵士に出会うと戦うよりも前に説得を試みた。

ヘリオスは、民家の影に隠れて兵士達をやり過ごそうとしているときに彼に尋ねた。

「どうして、マティアさんは危険を顧みずに反政府勢力に加わっているんですか?」

「もう…こんな歳だからね。死ぬのはどうせ少し早くなるかどうかだ。家族は皆、私のせいで離散した。名誉は既に泥の中だ…。私には、もう失うものは何もない…。だが、わずかに残った希望だけは、良心だけは捨てられない。…私は、自由を知っている者として、あの時自由を守れなかった者の責任として、最後に、最後にもう一度だけ、世の役に立ちたいのだ。そのためなら、この老いた命など惜しくはない」

彼は、敵の兵士が消えたタイミングを見計らい、「行くぞ」とヘリオスらに合図する。一同は小声で答えると彼の後に続いた。

 松明を掲げた大きなテントが見えた。それまでにも警備の者が何人かいて交戦もしたが、皆ヘリオスやマティアの言葉を聞いて力なく剣を下ろし彼のいる方をさした。皆がこの命令に賛同できず中止を願っているようだった。

 

 つづく

ただひとEP16

 

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