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小説 ただひと  EP12 脱出(2)

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 EP12 脱出(2)

 

頭領は名前をルミエールという。短くエールと呼ぶ人もいる。彼は反政府勢力の頭領として仲間達をまとめ上げていた。彼の望みは人々に自由を取り戻すことだった。

ヘリオスは、ルミエールたちの考えに同調して、彼らを脱出させるために手を貸すことになった。手を貸さなければ遠からず彼らは断頭台の露と消える。それはあまりにも酷いと思ったからだ。セレーネとマナもそれに同意した。ディオンはもともとこういったことに興味がないのか「お前がそうしたいのならそうすればいい」と言って消極的に同調した。

この前女頭領のアリシア達が使った道は封鎖されたので、別の道を行くことになった。ヘリオス達はあまり戦わなくてすむように人の少ない道を選びながら進むことにした。

ヘリオスはルミエールらレジスタンスと共に王城の中を隠れながら逃げつつ彼に言った。

「ルミエール、俺は今までよくわからないままに、流れに流されていた。でも今はっきりと思う。俺も自分の良心に従いたい」

「そうか。それが一番いい」

ルミエールは力強く答えた。

 一同は人目を避けて下水道沿いに逃げていたが、その道を抜けた先の地下道出口の前でアウダスとディートリヒに見つかった。

 アウダスは待ち構えていたとばかりに彼らの前に立ち塞がった。

「ディートリヒの読みが当たったか…」

「なに!?先回りされていた?」

頭領はすぐさまサーベルの柄に手をかけた。

「将軍…」

ヘリオスとアウダスの視線が鋭く交わる。

ヘリオス、今であればお前の罪は見逃そう。その男達をこちらに引渡せ」

ルミエールやその部下が疑うような目で彼を見る。ヘリオスは覚悟を決めたように一瞬間目を閉じて、それからまっすぐにアウダスを見た。

「断固拒否します!」

「なに?」

「俺はようやく目が覚めたんです。この国は不自由だ。どうして自分の意志で、良心で、自分の人生くらい決められないのか!どうしてルミエールや異を唱えただけの人々が捕まるのか。どうしてアリシアや無力な女性や子供まで、殺されないといけないのか!こんなのおかしい!!国家に楯突く者は犯罪者?いや違う、そもそもこの国のあり方自体が間違っているんだ!」

「洗脳でもされたか」

「いいえ、俺は俺の頭で考えて、言ったまでです。そして自分の良心に従って動きます」

「逃がさんぞ」

「捕まりませんよ」

アウダスの鋭い剣撃が一同を襲う。そしてそれに耐えても、後方から援護するディートリヒの魔法が容赦なく彼らのもとへ降り注ぐ。

「く、早すぎて照準を合わせられない」

さすがのディオンもアウダスの素早さを前にしては魔弾を使いこなせずにいた。ルミエールとヘリオスは二人がかりでアウダスの剣撃を防いでなんとか反撃しようとしている。しかしそんな暇もなく次から次へと攻撃がしかけられ、マナは二人の体力を回復させようとするもののすぐに削りとられていくという始末だった。その時マナの上に滝のような水が浴びせかけられた。ディートリヒの攻撃だ。

「ディオン、後方のディートリヒの詠唱をとめさせて」

セレーネが叫んだ。

「よし、あっちなら素早すぎてねらえないってこともなさそうだ」

ディオンは魔弾の照準をディートリヒに合わせた。一発炎の魔弾が命中した。ディートリヒがよろめく。アウダスはそれに気づいて次の攻撃を防ごうと彼女の前に進み出た。

「いまだ!」

ルミエールは彼にようやく隙ができたことに乗じて攻撃をしかけた。ディオンの魔弾もディートリヒではなくアウダスに命中した。しかし力の達人はその程度ではよろめきもしない。再び体勢を立て直し、ルミエールの攻撃を薙ぎ払い、次にヘリオスの剣戟をとめた。

「投降しろ!ヘリオス!」

「嫌です!」

「俺を本気にさせるな。一太刀で、ケリがつくんだぞ」

「力ではあなたには誰も敵いません。けれど、あなたの力の使い方は間違っている。将軍!あなたの力は本物です。けれど、今のこの国のあり方は、あなたの素質を凶器に変えている!そして俺もその一部だった」

ヘリオスがアウダスの剣を払った。彼がわずかに動揺している証拠だった。

「俺は!自分の良心に従います!たとえそれが法に背いていても!!」

「今だこっちだ」

頭領が煙幕を張り、ヘリオスらを呼んだ。そしてあたりが白い煙に巻かれている間に全員が逃げだした。

 アウダスは攻撃を受けて弱っているディートリヒを抱き起こした。そしてヘリオスらが消えた辺りを見つめた。

「逃がしたか…。いや…俺が逃げたかったんだ…」

 

 

つづく

ただひとEP13

 

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