小説イラストレーター蒼生のなんでもやってみるブログ

小説家兼イラストレーターの蒼生が気ままに書いているブログ。Twitter https://twitter.com/sousei0303 mail: sousei_novel@yahoo.co.jp

小説ただひと EP10 もう一人の将軍(2)

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 EP10 もう一人の将軍(2)

 

隠れアジトの外が何やら突然騒がしくなった。この場所を任されている女頭領アリシアは悪い予感がして立ち上がった。

「外に何かいる。万が一に備えて逃げる準備をしな」

彼女は指示を出すと自らも剣をとった。その時勢いよく扉が開き、若い男が血相を変えて転がり込んできた。

「姉さん大変だ!軍人が突然来て表で戦いが始まってる」

「どういうことだい?何でまた突然…ここはまだ見つかっていないはずじゃ」

会話の途中で鈍い音がした。男は後ろから切りつけられ、声を上げることもできずに前へ倒れた。部屋の中にいた女性や子供たちが悲鳴をあげる。

「この場所がどうして知られたかって?そんなの少し締め上げれば訳ないですからね。さて、あなたが副リーダーですか」

ジェイスは剣の先についた血を払いながら尋ねた。

「そうだが、ここにはまともに戦える人間は居ないよ。女子供と老人ばかりだ」

「そうですか。でも政府に楯突く思想を持っていることに変わりはない」

ジェイスの目がギラリと光った。アリシアはぞっとして、目の前に居るのが残虐な人間でレジスタンスの殲滅を狙って来たのだとわかった。彼女はとっさに部下に叫んだ。

「あんた達、逃げ道を確保しなさい!私達が時間をかせぐから、すぐに女子供を逃がすんだよ!」

「了解」

「誰も、逃がしませんよ」

ジェイスの冷酷な目がその場の全員をとらえていた。

 アリシアは剣を構えた。しかし自ら相手の懐に入るような真似はしない。しっかりと間合いを取ってじりじりと相手のすきを窺っている。ジェイスはそれを鼻で笑った。

「私を誰だと思っているんですか?冷鬼ジェイスとは私の事。そんな間合いをとっても意味がない。一瞬で砕け散るのですから」

言ったが早いか、切り裂くような風がアリシア達を襲った。

「ほら、もう崩れた」

耳元でジェイスの声がしてアリシアは恐怖を感じた。次の瞬間彼女は胸から腹にかけて激しい痛みを感じ、地面にたたきつけられた。ジェイスの剣が彼女を切り捨てたのだ。そして次々と叫ぶ声が続く。一度も剣が交わる音がしなかった。代わりに仲間の悲鳴が続く。あっという間に全員が彼の剣の前に砕け散った。

「あっけなかったですね。おや逃げる時間もかせげなかったようですね」

女性や子供を逃がすために残っていた人物は震えながら短剣を手になんとか立っている。彼の後ろではまだ非戦闘員が逃げている。

「逃がしませんよ。一人も…」

ジェイスの冷酷な目がギラリと輝く。

「ひっ」

それでも逃がすために彼は短剣を持って立ちふさがる。それをジェイスはあざ笑うかのようにゆっくりと全く急ぐ様子もなく近付いていく。彼の靴音が全員の死へのカウントダウンをとる。

その時、ジェイスの背後で「まちな!」という声がした。見るとアリシアが最後の力を振り絞って立ち上がっていた。

「自由や、自由や、自由…。我、汝と死せん」

彼女は体中を真っ赤にして血を滴らせながら、その燃えるような瞳を彼に向けていた。

「姉さん!生きていたんですね」

短剣を持っていた男は泣き出しそうな顔で言った。

「はやく、みんなを…」

ジェイスは踵を返すとあきれたように溜息をついた。

「まだ生きていたんですか…。しぶとさだけは認めましょう。でも勝てませんよ」

「今勝つか勝たないかじゃない。私が負けても、同じ志を持つ者が、自由を勝ち取る」

「安っぽい理想。お見事です」

そしてアリシアの望み通り、ジェイスは受けてたつとばかりに剣を構えた。アリシアは自分の命が今にも尽きようとしていることをはっきりと自覚していた。だからこそ仲間の命をつなぐためにも最後の力を振り絞って剣を構え技を繰り出した。今度は自分から間合いを縮めにいった。彼女はすばやく身をかわしてジェイスの攻撃をかわすと、麻痺薬の塗られた剣でわずかにジェイスの腕に傷を負わせることに成功した。とたんに彼の動きが鈍くなる。

「く、思い通りに体が…」

そのすきに彼女は最後の力を振り絞って大上段から剣を振り下ろそうと飛び上った。ジェイスの瞳が見開かれ、あともう少しの所で剣が彼に届くところだった。しかしそれよりも早くジェイスの剣が彼女の胸を貫き、そのまま彼女は息絶えた。彼女の手から剣が転げ落ちる。

 ジェイスは苦々し気にアリシアの亡骸を地面にたたきつけて剣を抜いた。

 もう非戦闘員は誰もいない。彼らが戦っている間に全員どこかへ避難してしまったようだった。また麻痺薬が回っている今のジェイスには追撃することもできなかった。彼は舌打ちした。

「ふん、うっとおしい。おかげで殲滅できなかった。まあいい、次の機会に…」

彼は傷口に手を当ててレジスタンスの隠れ家を去った。

 

 

つづく

ただひとEP11

 

YOUTUBE朗読版 

www.youtube.com


ツイッター  

twitter.com