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小説ただひと EP8 小さなゴーレム

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 

EP8 小さなゴーレム

 

 翌朝、副官の作戦通りの場所に行ってみるとゴーレムの足跡と野営したあとだけが残っていた。

「少し遅かったか…」

アウダスは悔しそうに言った。

 ディートリヒも次にどこに現れるかまでは予測できないようで、これ以上作戦を進めるのは困難だと進言し、アウダスも彼女の言う通り作戦を中止して全軍に撤退を命じた。

知の達人との戦いで何の功績も挙げられなかった力の達人率いる部隊は王都に帰還すべく道を急ぐ。

王都へ続く街道を兵士たちが一列になって進んで行く。傷ついた兵士たちは互いに支えあい、王都できちんとした医療を受けられるようもう少し頑張ろうと励ましあった。

ヘリオス達も初めての戦いで疲れていたが、セレーネの疲労は特にひどく、限界に達しつつあった。彼女はこの世界に居るだけで幾分かの体力を使ってしまうらしい。しかも連日の戦いや野営のせいもあり、さらに体力を消耗していた。彼女はなんとか立っているという様子で、今にも倒れてしまいそうだった。しかしヘリオスは彼女を背負っていくわけにもいかないので一生懸命そばで彼女を励ましていた。だから、道中民家を見つけると彼は慌ててアウダスのもとへ行き頼み込んだ。

「将軍!セレーネが弱って今にも倒れそうなんです。お願いします!少しの間隊を離れて休ませてください」

「わかった。では王都で待っている。セレーネ、よく頑張ったな。体力が回復するまで休むといい」

アウダスは彼女をねぎらうと、再び全軍に号令をかけて進んだ。

  ヘリオスとセレーネ、ディオンは小さな木造の小屋までたどり着くと扉を叩いた。

「すみません!すみません!」

すると中から白髪の老人がでてきた。

「お願いです。仲間がひどく消耗していて。少しだけ休ませていただけないでしょうか」

老人はヘリオスの後ろで今にも倒れそうなほどふらふらしているセレーネに目をやり頷いた。

「分かった。入りなさい」

「あ、ありがとうございます!」

老人に迎え入れられ、三人は家にあがった。

「マナ、お客さんだ」

「はーい」

奥から子供のような声が聞こえたかと思うと大男くらいの身長の小さなゴーレムが出てきた。三人はそれを見て仰天した。

「マナ、このお嬢さんを寝室まで連れて行ってあげなさい」

「はーい」

マナと呼ばれたゴーレムはセレーネを抱きかかえた。

「え、ちょっと」

「あー暴れないで。危ないから」

そう言ってゴーレムはセレーネを寝室まで連れて行った。

「な、なぁ…。あれって」

ディオンがヘリオスに目配せをすると、彼も同じことを思っていたらしく「あ、ああ」と頷いた。

「さあ、あなた方にはお茶でもごちそうしよう」

老人は愛想よく言うと二人をテーブルのある部屋へと案内した。

 

「ほう、なるほど。マナに良く似た巨大なゴーレムが居たと…」

二人から話を聞いた老人はお茶をすすりながら興味深そうに呟いた。

「大きさは全然違うけどな」

ディオンが言う。

「知の達人と共に、か…」

「おじいさん、正直俺はあんな種族は見たことがない。もしかしたら俺が知らないだけで、実はこういう種族が一杯居るんだろうか?」

「多くは居ないじゃろうな。少なくともマナはわしが研究の末に造った生命じゃ。一人しかいない。だからわしもお前さん方の話を聞いて驚いとる」

「え、造った?」

二人は老人の言葉に耳を疑った。

「そうじゃ。生命の土というのがあっての、昔から雨の日には生命の土から土人形が生まれるという伝承があるんじゃ。わしは、それを元にマナを造ったんじゃ」

「そんなことが出来るなんて…」

ヘリオスは信じられないとばかりにつぶやいた。

「わしは本物の生命の土とそっくりな構成の土を造る研究をしていての。マナはひとつまみの生命の土と、それによく似た物質の両方を合わせて出来ておる。けれど生命の土の比率が少ないせいか、マナはあれ以上の大きさにはならないのじゃ。だからもし、知の達人がわしと同じ方法でその巨大なゴーレムを造ったのだとしたら、どこかに莫大な量の生命の土があるということになるの」

「それって希少なのか?」

ディオンが尋ねると、老人は深くうなずいた。

「その通りじゃ。この地上ではもうほとんど見当たらなくなっている。生命の土が少なくなってきているせいで、海や森が弱ってきている」

「それで俺の家の畑は実りが悪いんだろうか…」

「え?そっち?」

「ふーむ、可能性はゼロではないのぉ」

その時セレーネが寝室から出てきた。

「え?セレーネ、具合の方は大丈夫?」

「ええ、なんだか嘘みたいにすぐ良くなっちゃって…」

「きっとマナのおかげじゃな」

「僕なにもしてないよ」

「マナはそばに居るだけで人を元気にするんじゃよ」

老人はにっこりと微笑んだ。

「ごめんなさい、心配かけてしまって。急いで部隊を追いかけましょう」

「そう焦りなさんな。お嬢さん、また急いで出かけてもすぐにフラフラになってしまうだけじゃよ。悪いことは言わないから、今日はゆっくりしていきなさい」

「そうだよセレーネ。今日は泊まらせてもらおう」

「本当にご迷惑をおかけしてしまって…」

「なんの、気にすることはない」

老人は微笑んだ。

その晩、老人はゴーレムと一緒にヒロインの部屋を訪ねた。

「こんばんは、お嬢さん」

「こんばんは、すっかり良くして頂いて本当にありがとうございます」

「いいんじゃよ。困った時はお互い様と言うしの。ところでお嬢さん、わしはすごく気になっている事があるんじゃが、尋ねてもいいかの」

「はい」

「お嬢さんのその透き通るような色の薄さ、わしらとは違うように見える。そしてマナに触れた時の反応、お嬢さんはこの国の人ではないね。いや、この世界の人でもないね。一体どちらからいらしたのかの?」

「お察しの通りです。…私はアンフェルから来ました。このエリスとは違う世界です」

「それは、触れたら光になってしまうという…」

「そうです。その通りです」

「どうして、またそんな危険なことを…」

「アンフェルは今、崩壊寸前までバランスが崩れています。エリスよりももっと酷い。いえ…アンフェルのバランスが崩れたからエリスも酷い状況になっているんです。私は、このまま終焉を心細く待つよりも、できることがあるのならそれを為して崩壊を防ぎたいと思ったんです」

「そうかい。なんて気丈なお嬢さんなんだろうね…」

老人はそばにいるゴーレムの方を向いて言った。

「マナ、聞いただろう。お嬢さんたちと一緒にいっておやり」

「え?やだよ!!僕ワイズから離れたくない」

「わしもお前が居ないと寂しいよ。でも、このお嬢さんは一人では戦えないんだよ。

マナ、お嬢さんに手を当てておやり。分かるだろう、これで。このお嬢さんは自分の体を削っても皆の幸せを守りたいと思って、危険を顧みずに来ているんだ。お前が傍に居てあげるだけでいいんだ。それだけで、このお嬢さんは自分の力で頑張れるんだから」

「ヒドイよワイズ!!僕、僕、いやだー!!」

「あ、マナ!!」

小さなゴーレムは駄々をこねる小さな子供のように足音を響かせて家から飛び出していった。

「ああ、大変」

セレーネはマナのあとを慌てて追いかけた。

 

 

つづく

ただひとEP8(2)

 

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