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小説ただひと EP7 知の達人(2)

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

 
EP7 知の達人(2)

 

その晩、ディオンは作戦会議でソロンがまだ近くに陣取っているかもしれないことを知り、こっそりと野営地を抜け出した。猟師で夜も目がきく彼は、副官の言った通りの場所に行ってみた。すると予想通りゴーレムの巨大な足跡がある。奥にはテントもあり、姿は見えないが中で明かりが灯っていた。ディオンは心臓の鼓動が激しくうつのも構わずそこを訪ねようと歩み寄る。するとすぐにソロンの配下と思しき人型の魔物にとらえられもみ合いになった。
「はなせ、知の達人に用があるんだ。俺は敵じゃない!」
「なにごとだ!」
テントの中からソロンが現れた。
「知の達人!お願いです俺はあなたの味方です。信じてください。いい情報を持ってきました」
「情報?まあ、いい。離してやれ。中で聞こう」
ディオンは胸を撫でおろし、テントの中に入った。知の達人の配下の魔物たちはいつでもディオンに襲い掛かろうと目をぎらつかせていたが、彼の指示がなければそうすることもできないらしくうずうずしているようだった。
 知の達人ソロンは噂通りの物腰のやさしい人物だった。彼はありとあらゆることに通じた学者であると同時にその才能と知識を人々の為に役立てようとしてきた慈愛深い人物として以前は尊敬を集めていた。そのため、ディオンもいきなり殺されることはないだろうとふんで、イチかバチか賭けてみようと思い会いにきたのだ。
「そのマント、アウダスの配下か?」
ソロンはとても落ち着いた様子でディオンの着ている服に目をとめた。
「はい。今は力の達人のもとで働く兵士です。あなたにお伝えしたかったのは。明日アウダス将軍らがここへ攻勢をかけにくるということです」
「それは本当か?」
はじめて彼の表情が変わった。ディオンの情報で危険を感じたのかもしれない。
「はい!本当です。俺はアウダス将軍直属の兵士です。今日作戦会議の中で聞いたので間違いありません」
「そうか…」
ソロンはディオンの目を穿つように見て、それが本当かどうか確かめようとしているようだった。噂ではソロンは読心術を使えるとのことなので、ディオンも気が気ではなかった。
「分かった。嘘はないようだな。しかし何故危険も顧みず敵である私にそんな情報を流しに来た」
「それは、あなたが俺の憧れる強さを持っているからです。俺は猟師ですがあなたのように強くなりたい。お願いします。あなたの力で俺を強くしてください。そうすればこれからもあなたを助けるために情報を流すスパイになります」
ソロンは訝しげに彼を見た。そしてディオンの中にある劣等感とそれ故の強さへの憧れに気付いた。そして彼が包み隠さず本心を述べたのだとわかり頷いた。
「よかろう。猟師と言ったな。銃は猟銃以外も使えるか?」
「もちろんです!」
ディオンは知の達人の言葉に目を輝かせた。
ソロンは彼が自分と同じように魔法を使うことができるよう特別な銃を与えた。それは火や水、雷や風といった様々な属性の魔弾を使うことができる特別なものだった。そしてディオンはそれを大切そうに握りしめて日が昇る前に野営地へ戻ってきた。
彼は単なる猟師から知の達人と同じ能力を持つ魔弾の射手になった。

 

 つづく

ただひとEP8

 

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