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小説ただひと EP6 宿舎

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

EP6 宿舎

宿舎に入ると、遠くから見ていたセレーネが心配そうに近づいてきた。
「ディオン、怪我はない?」
「放っておいてくれ」
ディオンはひどく不機嫌で彼女の心配さえも突っぱねた。
「セレーネ。大丈夫だよ。ディオンは今ちょっと機嫌が悪いんだ」
ヘリオスはなんでもないからとセレーネに言ってイライラしているディオンから彼女を遠ざけた。
「今から俺たちはアウダス将軍のもとへ向かわないといけないんだが、セレーネも来るかい?」
「力の達人と呼ばれている人よね?ええ。私も会ってみたいわ。話も聞いてみたいし」
「そうだね。もしかしたらセレーネにとっても何かヒントになることがあるかもしれないし。ディオン、そんな不機嫌な顔で将軍にお会いすることもできないだろ?ちょっと顔でも洗ってすっきりしてこいよ」
「こういう顔なんだよ。悪かったな」
ヘリオスはやれやれと肩を落とし、三人でアウダスの部屋へと向かった。
 アウダスの部屋に入ると、彼は気さくに迎え入れてくれた。若くして成功した彼にはまるで威張りくさったところがなく、年も近いことからヘリオスには兄のように感じられた。
ヘリオス、よく来たな。それからディオンも。これからは俺と共に国のために働いてもらう。さあ、君たちも我々の同胞だ。よろしく頼む」
アウダスが握手を求めた時、ディオンはすねて無愛想に握手をした。それをアウダスは気にした風もなかった。そしてセレーネにも握手を求めたが、彼女は慌ててヘリオスを見た。
「将軍、彼女は人に触れると溶けてしまう特殊な体質らしいんです」
「…は?それはどういうことだ?」
アウダスは冗談だろうというように尋ねた。
「つまり…」
セレーネが以前と同じように髪の毛を一本抜いて、彼の手に落とした。力の達人の手に触れるなり蒸発するように光となって消えた。
「まさか、こんなことがあるなんて。…だが確かソロンが昔そんな事を言っていたような気がする。確かに存在したんだな…」
アウダスはセレーネをまっすぐに見た。悲しそうな、そして彼女を通して追求するような目だった。ソロンというのは彼の双子の兄弟で知の達人と呼ばれる人物のことだ。彼は今力の達人とは別の道を歩んでいる。
「私たちのことを知っている人がいるの?」
セレーネは驚いて彼に尋ねた。
「ソロンは色々なことを研究していた。その一つに君たちのような人々のこともあったのかもしれない。俺も詳しくは知らないが…」
セレーネは彼の言葉で考えをめぐらすように押し黙った。
「とにかく、彼女への対応には気をつけるようにしよう。しかしそれ以上に、ヘリオス、お前が彼女を守ってやるんだぞ」
「はい!心しております」
 三人はその後装備を一式受け取ると、アウダスのもとで任務に就くことになった。

 

つづく

 

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