小説イラストレーター蒼生のなんでもやってみるブログ

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小説ただひと EP3 少女

ネット公開版   小説 ただひと   作 蒼生

 

EP3 少女

ディオンは猟銃を、ヘリオスは腰から無骨な剣をぶら下げている。森に行くときは必ず身を守るために武器を持っていく必要がある。ディオンは猟師なのでいつも猟銃を肩からさげているが、ヘリオスは農民で銃の扱いにも不慣れなので代わりに剣を使う。けれど農作業ばかりしている割には太刀筋がいいらしく、彼は木刀試合で負けたことが一度もない。
 ディオンは森に入ると辺りを見回した。木々が自然のままに枝を空に伸ばし、青々とした葉を茂らせている。
「この前見つけたんだ。果物もなっているし、動物もいっぱいいる。あまり人が入らないから静かだし、荒らされていない。な?いい所だろ?」
「こんな場所があったなんて知らなかった」
ヘリオスは驚いたようにキョロキョロと辺りを見わたした。
「たまには農作業以外のこともしてみるもんだろ?」
ディオンは満足げに笑った。
二人は果物や野草を採取しながら森の奥へと進んでいく。そして一段と濃く茂っている林の前で立ち止まった。ディオンは人差し指を口に当て、銃を肩からおろした。何か獲物がいるらしい。彼はじりじりと音を立てずに近づいて林の奥の獲物に目を凝らした。しかし、すぐに血相を変えて叫んだ。
「大変だ!女の子がモンスターに襲われている!」
「なんだって!急いで助けよう!」
 奥では、色の白い少女が杖を手にニメートルもある猪のようなモンスター相手に応戦していた。
「一緒に戦おう!一人じゃ無理だ」
ヘリオスは剣を構えて彼女をかばうように立った。
「一人でこんな森の奥にいるなんて一体どんな迷子だよ」
ディオンもあきれたように猟銃を構える。
「あ、あなた達…」
少女は驚いたように眼をしばたたいた。
 その時モンスターが三人めがけて突進してきた。
「あぶない!」
少女は杖を振りかざし、何か呪文を唱えた。その瞬間光のバリアができて三人を守った。そしてモンスターがひるんでいるすきにヘリオスが剣で足を薙ぎ、ディオンが急所に弾を命中させた。
「やれやれだぜ」
ディオンは倒れたモンスターの近くに歩み寄り弾の命中具合を確かめた。しっかり眉間に命中している。彼はそれがうれしかったのかヒュウと口笛を吹いた。
「危ない所を助けてくれてありがとう」
髪の長い、色素の薄い少女は二人に礼を言った。
「いや、いいんだ。それよりも怪我はないかい?」
「やめて!近寄らないで!!」
ヘリオスが心配して近寄ろうとした途端、少女は悲鳴に近い声をあげて後ずさった。二人は呆気にとられて立ちすくんでいる。
「ごめんなさい、でも駄目なの…」
「へえ、助けてもらっといて随分な言い方だな」
ディオンは不快感を隠すこと無く言った。少女は申し訳無さそうに目を伏せた。
「ごめんなさい。でもそれは、つまりこういうことなの…」
彼女は自分の髪の毛を一本抜いてからヘリオスに「手を出して」と言った。彼が遠慮がちに出した手の上に落とされた髪の毛は、触れた所から光となって消滅した。
「これは…!」
「一体どういうことだ?」
二人は目の前で起きた珍事に目を見張った。
「私は、あなた達とは体の構成が違うから触れられると溶けてしまうの。だから、あんな事を言ってしまったけれど、悪気はなかったの。ごめんなさい」
少女が語った言葉に二人は絶句した。特にディオンは訝しげに彼女を見ている。
「変な事を聞くかもしれないけど、あんた…この世界の人間?」
「いいえ」
「じゃあ…何しにこんな所へ…」
ディオンはますます納得がいかないというように彼女に詰め寄った。
「ごめんなさい、それは言えないわ…」
「まあ、いいじゃないか」
ヘリオスが二人の緊迫した問答を止めさせようと割って入った。
「君が何をしにここへ来たのかは聞かないよ。でも一人じゃ危ない。さっきみたいにまたモンスターに襲われるかもしれないし、知らない土地で道に迷うかもしれない。もし、しばらく居るのなら、俺達が面倒を見るから遠慮せずに頼ってくれよ」
「ちぇ、本気かよ。そんな素性の分からない人間の面倒見るなんて」
「当たり前だろ。困ってるんだから」
「ありがとう」
少女はヘリオスの優しい言葉で初めて表情をゆるめた。
「気にしないで。ところで、名前を聞いてもいいかな…」
「セレーネよ」
もしかしたらこれも秘密と言われないかと不安だったのだが、思いのほかすんなりと答えてくれたのでヘリオスは安堵の笑みをもらした。
「セレーネ。よろしく。俺はヘリオス。あいつは友達のディオンだよ」
「どうも」
ディオンは軽く会釈した。
「よろしく。ヘリオス。ディオン」
「ああ、よろしく!とにかく今日は日が暮れる前に村に戻ろう」
ヘリオス達はセレーネを連れて森をあとにした。

ただひとEP4


つづく

 

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